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2013年12月 月次レポート(蔦原亮 スペイン)

12月次レポート
マドリード自治大学
蔦原亮

 経済危機に関するニュースを聞かない日はないスペインであるが、それでもクリスマスシーズンには盛り上がりを見せた。市の中心部は大量の紙袋を両腕にぶら下げた人々で溢れ、マドリード市の企画した主要クリスマスイルミネーションスポットを廻るツアーバスのチケットはちょっとしたプラチナチケットのようであったと友人から聞いた。「この経済危機に危機前と変わらない奔放な消費活動はいかがなものか」ということを言う人もいないこともないが、個人的には多くのスペイン人と同様に、一時的なものであるにせよ、久々に元気なスペインを見られてよかったなという感想を抱いたというのが正直なところである。

 先月のレポートにて報告した、現在スペイン語の動詞を名詞化する接辞、-ción, -mientoに関する研究を開始する前には、夏から秋にかけ、同様の問題意識に基づき、別の名詞化接辞、-dor, -nteの語彙意味論的研究を行っていた。-dor, -nteは概ね英語の-er, -ntに対応し、接続する動詞の表す事象を実行する人・物に言及する名詞を派生するという点で共通している。この二つの接辞の共通点と相違点を明確にし、両接辞の持つ情報・価値を特定すること、それがこの調査の第一の目的である。調査の結果、両接辞の共通点、相違点はMoreno Cabreraが言うところの「使役性」により体系的に説明できると一応の結論に至った。先月にはこの一連の調査をまとめ、スペイン言語学会に口頭発表として提出し、今月、採用通知が届いた。学会は来年一月の20日から三日間にわたり行われる。
 従って、今月は-ción, -mientoの調査と並行して学会発表の準備を進めた。その一環として本滞在中にマドリード自治大学に於いて立ち上げた、本学のランチョン・リングイスティックス風のミーティングで口頭発表の叩き台を披露した。聞き手には特に、結論が明確に述べられているか、その結論を導くためのデータは正しく提示されているか、説明は簡潔であるかという点を特に重点的にチェックするよう頼んだ。これらの点については派遣者も特に注意深く考えていたつもりであるが、それでもいくつか、不十分な点が指摘された。この点を改善することで学会への出席をより有意義なものとしたい。

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