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2013年12月 月次レポート(説田英香 ドイツ)

12月レポート

説田英香
派遣先: フライブルク大学(ドイツ)

 コブレンツでの文書館訪問からフライブルクに戻り、12月は博士論文の第一章第一節の執筆を行った。その傍ら、毎週水曜日にはコロキウムに参加した。
 第一章では本論の前史にあたる、1960年代のドイツ連邦共和国(以下、ドイツ)における外国人雇用政策と外国人雇用の実態を扱う。その第一節では、戦後ドイツ における外国人雇用の開始、そしてその背景にある、労働力募集協定およびその締結過程 、そして当時のドイツ労働市場の展開について論じる。また、当時の様子として、外国人労働者雇用の仕組みや就労滞在の実態などについても冒頭で触れる。更に、外国人労働者数が急増し、外国人労働者雇用がドイツ経済にとって重要性を持ち始めた1960年前後から1966年の景気後退までの期間の、連邦政府における外国人労働者雇用についての議論を扱う。ここでは主に、外国人労働者雇用開始当初、外国人の就労滞在期間、とりわけ就労期間長期化--さらには定住過程--について、連邦政府はどのように認識しており、その後の展開をどのように捉えていたのか、という点に着目する。この点は、本論のテーマである帰国促進政策と強く関わってくるため、第一節の中でも特にポイントとなる。
 1960年代の外国人労働者雇用政策およびその実態については、分野を超えた研究が非常に多く存在している。移民をテーマとする研究蓄積が社会学分野等に比べ、比較的浅い歴史学ではあるが、1990年以降の文書史料の公開を皮切りに、 近年に至るまで多角的な視点からの研究が公開されている(参照: Jochen Oltmner: Migration im 19. und 20. Jahrhundert, München 2010; Jochen Oltmer / Axel Kreienbrink / Carlos Sanz Díaz (Hrsg.): Das „Gastarbeiter"-System. Arbeitsmigration und ihre Folgen in der Bundesrepublik Deutschland und Westeuropa, München 2012.)。このような研究状況から、第一章は先行文献および刊行史料をもとに論じる。今月は主に、Johannes-Dieter Steinert: Migration und Politik. Westdeutschland - Europa - Übersee 1945-1961, Osnabrück 1995、および Bundesanstalt für Arbeit (Hg.): Anwerbung, Vermittlung, Beschäftigung. Ausländischer Arbeitnehmer - Erfahrungsbericht- (1961-1970) (刊行史料)を軸に、労働力募集協定締結までの過程および雇用と就労実態についてまとめた。1966年までの連邦政策における議論については調べ終わっているものの、文章として仕上げるまでに至らなかったため、これらは引き続き1月の課題とする。

以上

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