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2013年12月 月次レポート(太田悠介 フランス)

ITP-EUROPA月次報告書(12月)

太田 悠介

 今月も先月と同様に博士論文の執筆に多くの時間を充てた。論文ではバリバールの思想を包括的に扱うことを意図しているが、今月はバリバールの処女作であり、またルイ・アルチュセール、ロジェ・エスタブレ、ピエール・マシュレー、ジャック・ランシエールとの共著である『資本論を読む』(1965)に関する叙述を進めた。
 『資本論を読む』は、1956年のフルシチョフが口火を切ったスターリン批判によって、理論としてのマルクス主義もまた批判にさらされる時代状況下で書かれた。著者たちはこの時代潮流に対して、マルクスの哲学を「反人間主義」と捉える「構造主義」的読解を対置することで、マルクス主義を救い出すことを目指した。綿密な議論を展開するバリバールにあっても、同著所収の長大な論文「史的唯物論の根本概念について」はきわめて凝縮した論理によって構成されている。議論をある程度再構成したうえで博士論文の主題と結びつけて論じる必要があるがゆえに、予定していた枚数を超えた分量を書くことになった。この箇所を書き上げれば、論文の前半部分はかなり見通しがよくなるため、今はこの部分の完成にむけて専心したい。
 現在は二人の友人にフランス語のネイティブ・チェックを依頼している。直し方にやはりそれぞれ特徴があり、同じ内容を表現するフランス語表現の多様さについて、あらためて学ぶことが多い。何よりもテクストに関してコメントをもらえることが、執筆に際して大きな励みとなっている。

 

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