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2013年11月 月次レポート(太田悠介 フランス)

ITP-EUROPA月次報告書(11月)

太田 悠介

 今月はブロッサ名誉教授との面談に臨んだ。夏休みから秋にかけて執筆した博士論文の一部をお送りし、コメントをいただいた。またそれとあわせて、博士論文審査の審査員に関して、候補となりうる方の名前を具体的に挙げていただき、私個人の希望についても申し上げた。
 ブロッサ名誉教授は原稿にあらかじめ細かく目を通していただいていたようで、研究の手法および内容だけにはとどまらず、フランス語の表現にいたるまで丁寧なアドバイスをくださった。主としてふたつの観点からアドバイスをいただいたように思う。ひとつは哲学者を扱うに際しての基本的な手法についてである。それは、哲学者の思想の連続性そしてその延長線上にある最終的な到達点を意識しつつも、むしろその非連続性を強調することに留意するということである。このアドバイスは、哲学者の一般的な解釈に対して、ある時期に登場するあらたな概念や視点の転換を細かに書き込み、そうした解釈の枠組みには収まらない部分を浮かび上がらせることで、博士論文の意義を明確にするようにという意味であると理解した。あらためて考えてみると当然のことのようにも思われるが、自分のテクストを前にして指摘していただくと、腑に落ちるところがあった。
 もう一点は、私の研究対象であるバリバール(1942-)と時代を共有するブロッサ名誉教授(1946年生まれ)の同時代的な関心からのコメントがあった。例を挙げるならば、フランスの哲学者が必ずしも概念やコンテクストを共有していない英米圏において議論を交わすようになるとき、その思想の内容にどのような変化があるのか、あるいはないのかという点、またバリバールの著作のなかで近年とりわけ言及される機会が多くなってきた『平等自由の定理』(2010)をどのように博士論文で整理するのかという点などである。博士論文の執筆を進めることによって、ブロッサ名誉教授のこうした現代的な関心にも、最終的には自分なりの答えを示すことができればと考えている。
 クリスマス休暇前にもう一度面談の機会を持つことができるように、来月も執筆を継続する所存である。

 

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