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2013年10月 月次レポート(太田悠介 フランス)

ITP-EUROPA月次報告書(10月)

太田 悠介

 来月初頭のブロッサ名誉教授との面談を視野に入れて、今月はもっぱら博士論文の執筆に没頭した。自宅と国立図書館を行き来しながら、できる限り頁数を延ばし、面談までに相当程度の分量を準備するように努めた。ある程度の内容がまとまるごとにフランス人の友人に見てもらい、その都度修正を行っている。再考を促された部分を読み直してみると、議論の展開が早すぎて内容がつかみにくくなっている箇所、逆に論じている内容に比して展開が緩慢な箇所が混在していることがよく分かる。文章のこうした波が一定の幅に収まってくればそれなりに自然なフランス語に近づくということになるのだろうが、まだその段階からは依然として遠い。これは進むにつれて次第に整うことを期待して、今は先を急いでいる。
 16日はパリ第10大学で開催されたコロック「コルネリウス・カストリアディスとクロード・ルフォール――民主主義という経験」に参加した。今回のコロックに参加する前には、カストリアディスとルフォールの両者が「社会主義か野蛮か」グループに集った思想家の代表格として取り上げられるのだろうと漠然と考えていたが、実際に始まってみると、むしろ両者の相違点が争点となったことが新鮮だった。カストリアディスを軸におく研究者とルフォールを中心的に扱う研究者の双方が意見を交わすことで、両者の力点の違い、またそれぞれの思想の強みと盲点が明確な輪郭をもって浮かび上がってくる瞬間が幾度もあり、議論の大切さを今更ながら深く実感した。博士論文では、バリバールの思想という主題に関連する限りで、カストリアディスとルフォールの両者の思想に関しても部分的に言及したいと考えている。この点は論文提出までの時間との兼ね合いを念頭に置きながら進めたい。


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「コルネリウス・カストリアディスとクロード・ルフォール――民主主義という経験」ポスター

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