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2012年8月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

ITP-EUROPA月次レポート(8月)

水 沼  修

 昨年9 月にスタートした派遣期間は,今月で終了します。約11 ヶ月間に及ぶリスボン滞在では,非常に多くの有意義な体験を行うことができました。
 当地到着後,リスボン大学博士課程への入学申請を行い,指導教官の先生方と話し合った上で,「コーパス言語学」,「統語論」,「ポルトガル語史」「文献学」等の授業・ゼミに参加しました。これらの授業・ゼミを通じ,博士論文を執筆する上で必要となる知識を増やすことができました。特に,「コーパス言語学」と「文献学」のゼミでは,ポルトガル語の書き言葉・話し言葉コーパスの作成・運用や,中世語テキストの校訂本の作成といった実践的な作業を通じ,今後,電子化されていないテキストを調査対象とする場合に必ず知っておかなければならない知識を得ることができ,非常に有意義な時間を過ごすことができたと思います。
 資料収集に関しても,リスボン大学付属文学図書館をはじめ,国立古文書館や国会図書館等,自分の調査に必要な資料が閲覧できる図書館・研究機関が,大学から近距離に位置していたため,先行研究や,電子化コーパスに収録されているテキストの元資料等,限られた時間で数多くの資料を閲覧・収集することができました。
 また,1 年を通じ,指導教官を担当していただいている先生方(Esperanca Cardeira 先生,Rui Marques 先生)と面談する機会を多く持つことができました。先生方との面談では,調査対象とするコーパスの選定,コーパスに収録されているテキストの文献学的特徴,考察対象となる各項目(ポルトガル語における複合時制の形成,形式における直接目的語と過去分詞の性数一致,複合時制の助動詞としてのhaver とter の交替,複合時制以外の形式におけるhaver とter の用法等)に関する先行研究の問題点及び分析の方法論等について,貴重な意見交換を行うことができました。これらの議論を通じ,論文執筆作業過程をより明確にすることができたと感じております。
 昨年10 月にリスボンで開催されたポルトガル言語学会の大会では,多くの研究発表を聴講する機会が得られただけでなく,自分の研究と関係のある研究を行なっている研究者や学生と面識をもつことができ,大変貴重な経験となりました。また,これら以外にも,リスボン滞在中に,学内や学外の多くの研究者と知り合うことができ,さらに,その内何名かとは今後も連絡を取り合えるような関係を築くことができました。これらの人脈は,今回の派遣を通じて得ることができた財産だと感じております。
 派遣終了後は,リスボン滞在で得られた経験を十二分に活かし,博士論文の執筆に尽力してまいりたいと思います。
 最後になりましたが,今回の派遣に際し,ご協力頂いた先生方,事務局の方々に厚くお礼申し上げます。

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