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2012年6月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

ITP-EUROPAレポート(6月)

水沼 修

自分が参加していた後期のゼミ(「文献学」)は,先月いっぱいで全日程を終了しました。今月は,博士論文執筆作業,及び,帰国後の学会発表に向けた準備に時間を費やしました。また,当地滞在期間も限られていることもあり,先行研究をはじめとした各種参考資料の収集のため,学部附属図書館や国立図書館に多く足を運びました。
 前回の指導教官との面談では, これまで採取した例文を対象に,形式的側面に見られる変化について整理することになりました。その結果を,先行研究の記述と比較した上で,今後の作業について再度話し合いを行うことになっています。
 また,これと並行して,韻文作品からのデータ収集作業を行うことになりました。これまでは,非文学テキスト及び散文の文学作品のみを分析の対象としていました。これは,当初,分析項目として考えていたのが,形式(haver/ter+過去分詞)の形態・統語論的特徴であったため,語順の自由度が高い韻律的文体は分析対象として適当ではないと判断したためでした。しかし,博士論文では,形態・統語論的特徴に加え,意味論的特徴にも留意した分析を行うため,より大きなコーパスを用いて調査することの重要性に鑑み,中世文学を代表するポルトガル語叙情詩を調査対象に加えることにしました。
 リスボン新大学のサイト(Cantigas Medievais Galego-Portuguesas:http://cantigas.fcsh.unl.pt)には,中世ポルトガル語の叙情詩がおよそ1680点収録されています。これらの作品は,3つの写本(o Cancioneiro da Ajuda, o Cancioneiro da Biblioteca Nacional, o Cancioneiro da Biblioteca Vaticana)を通じて,現代まで伝えられているもので,同サイトでは,作者やテーマごとに作品が整理されており,各写本のコピーや,語彙の解説なども参照できるほか,詩をテーマにした楽曲の視聴をすることもできます。今後は,これらの作品におけるhaverとterの使用についても調査を行うことになります。滞在期間中に,データ収集作業を終えることは難しいと思いますが,収集したできたものについては,ある程度整理した上で,指導教官と再度面談を持ちたいと考えています。
 また,帰国後の学会発表に向けての準備を開始しました。これまでに収集したデータの中から,特定の時代または作品を選び,そこで確認できるhaver及びterの生起例について,分析を行いたいと考えていますが,その際,文献学的側面についても十分な注意を払いたいと考えております。

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