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2012年2月 月次レポート(佐藤貴之 ロシア)

活動報告書(2月)

執筆者:佐藤貴之
派遣先:ロシア国立人文大学

 今月は学会準備、報告、事後作業に追われる毎日だった。今回の学会「第十三回若手人文学者国際会議」はエストニアのターリン大学で開催、文学セクションに参加、30名ほどの報告を聞いた。学会自体は3日間にわたって開催、個人研究報告の合間にはターリン大学やタルトゥー大学で教鞭をとる教授陣の研究報告も盛り込まれ、大変充実したプログラムだった。実行委員会の手厚い歓待には深く感謝したい。幅広い分野の報告に触れることで、自らの視野をひろめることができたことはもとより、参加のあった諸外国の若手研究者らと知己を得られたことも大変貴重な体験である。このような機会を通して、自らの専門分野を深めるとともに、活動範囲もひろめられるよう努力していきたい。
 参加者はエストニアをはじめとして主にロシア、ウクライナ、ラトビア、リトアニアからが多く、アジア諸国からの参加は見られなかった。参加者はみなロシア語母語話者だったため、非母語話者としては若干の障壁を感じたが、まずまずの感触だったといえる。プラトーノフ研究が盛んになりつつある現在、研究書や未公開資料が数多く刊行されている。そうした資料をもとに、プラトーノフとピリニャークの共作問題、その影響関係を論じたわけだが、テーマ自体比較的新しく、好感のもと受け入れられた。今回の報告は、ターリン大学が刊行する学術誌に掲載することが可能である。ただし、博士論文審査を管轄する高等試問委員会BAKが認定する学術誌に今回の論集が含まれうるか、この点が複雑であるため、あるいは安全策として派遣先大学が刊行している学術誌に投稿することも考えている。現在は学会の報告原稿を論文に加工する作業に追われている。この作業自体は来月中旬をめどに終わらせたい。
 この作業と並行して、次の学会に向けて準備を進めている。タルトゥー大学が4月に開催する国際学会は、残念ながら選考漏れしてしまった。審査委員会からの連絡によれば、今年は応募が多かったため、また来年応募されたし、とのこと。次回の行事は5月に派遣先大学が開催する研究会、並びにカザン大学(ロシア連邦タタルスタン共和国)が開催する学会がある。派遣先大学が開催する研究会は院生の参加が義務付けられている。研究会ではピリニャークとプラトーノフの共作、影響関係に関して引き続き研究成果を報告する。
 後者の学会は第四回国際学会「文学と芸術におけるノンフィクションと芸術性の統合」という共通論題で開催されるが、当方の研究とも呼応する問題設定である。応募に際しては「1920年代の文学作品におけるピョートル大帝の表象」(仮題)として提出する予定である(締切りは3月末)。ピリニャーク、プラトーノフに加えアレクセイ・トルストイを分析の対象とし、創作に見られるピョートル大帝の描写を分析する。文学作品で描かれる「事実」はいずれも虚構であるとはいえ、その虚構がいかに生み出されたか、その描かれ方を通して、1920年代における過去の解釈と受容プロセスを読み解くことができるといえる。
 最後に、2月は大統領選に関連してデモや行進が毎週のように開催された。そしてプーチンが再選したことに伴い、反政権派の行動が活発化し、警官隊によるデモ隊の検挙が相次いでいる。今後、こうした示威運動が過激化しないことを期待しつつ、研究に励みたい。

以上。

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