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2012年1月 月次レポート(水沼修 ポルトガル)

ITP-EUROPA月次レポート(1月)

水沼 修

 年末年始の休暇が終了してすぐに、指導教官との面談がありました。今回の面談は、データ収集作業の進捗状況の報告や、今後の作業についての話し合いが中心となりましたが、それ以外にも、参照すべき先行研究及び資料についても意見交換を行いました。
 自分は、修士論文から同じテーマ(ポルトガル語の複合時制の発展)を引き続き調査していることもあり、主要な先行研究については概ね把握しているつもりでおりましたが、今回の面談で、参考となり得る資料を指導教官から新たに何点か紹介していただきました。その中に、コインブラ大学の修士論文で、自分と同じテーマを扱った論文がありました。
 同論文(Maria João Costa 1998)は、「古ポルトガル語におけるhaverとter」について、統語論的及び意味論的観点に基づき、13世紀から16世紀のテキストにおけるこれらの動詞の使用を記述した研究です。参照したテキストの多くは校訂本で、各時代(世紀)を代表するものと筆者が考えたものが選択されています。分析は、haverとterが現れる各形式(所有表現、複合時制、+不定詞)ごとに行われていますが、複合時制形式に関しては、「伝統的な」形態・統語論的観点に基づく分析に偏りが見られ、形式の表す意味についての記述が少ない印象を受けました。しかし、同論文で扱われているテキストの中には、「中世ポルトガル語電子化コーパス(CIPM)」などの電子化コーパスに収められていないテキストもあり、自分の研究にとって有益なり得るデータが多く提示されていました。同論文で明らかにされなかった点を整理した上で、博士論文の調査における方法論、及び、調査対象とする時代やテキストについて再度指導教官と話し合うことになっています。
 なお、同論文を含め、指導教官から紹介いただいた資料の中には文学部図書館に所蔵されていないものが幾つかあり、これらの資料の閲覧は国立図書館で行いました。国立図書館(http://www.bnportugal.pt/)は、リスボン大学の南に位置し、文学部からは歩いて5分で行くことができます。年会費(10ユーロ)を払うことで、館内資料の閲覧やコピーサービス(有料)等の各種サービスを利用することができ、また、無線LANの利用も可能です。今後も、資料の閲覧や、執筆作業を行う場として、同図書館を積極的に利用していきたいと思います。

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