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2012年12月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2012年12月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学


 年の瀬を迎え、ボローニャの街も心なしか慌ただしく見え、ニュースではクリスマス商戦と悪化する一方の経済状況を憂う声ばかりが聞かれた。例年10月から活発になるデモ活動は、今秋も頻繁に実施され、制度改革に反対する学生たちによるデモ行進等が行われる度に交通機関の混乱が避けられず、度々不便と忍耐を強いられた。イタリアではデモ活動や労働者によるストライキが頻繁に行われるため、日常生活で発生する不便にはうんざりさせられてしまうが、同時にそれは、この国の歴史と現状を改めて考えさせられる体験でもある。前世紀前半、時代の変化に対する民衆の不安を巧みに絡み取り、ファシズムが誕生し得た史実を、今再び価値観や経済状況が変化する渦中で人々がこうした活動を通して声を挙げている様子を通して、改めて考えさせられるのである。
 さて、先月、国際シンポジウムにおける研究発表とイタリアの舞踊研究誌に論文発表を終えたところで、今月は、ようやく腰を据えて博士論文執筆作業のみに全力を注ぐことができた。現在執筆を進めている章では、イタリア未来派が舞踊に対してどのようにアプローチしていたか、宣言文と舞台作品の草稿を題材に論を進める。対象となる芸術家とその作品を最低限に絞り、広く浅い議論にならないよう留意する必要があったが、それは想像していた通りの難儀であった。「木」を見つつ、定期的に「森」を俯瞰する為に立ち戻り、書いては消し、の繰り返しをしているうちに、時間は飛ぶように過ぎていった。そのようななか、ボローニャ大学指導教員による面談指導において、執筆を終えた箇所については、この調子で進めていくようにという評価と同時に、掘り下げる必要のある箇所について具体的なご教示をいただいたことが、大きな励みとなった。精神的な安定を保つ努力と体力とが必要とされる日々ではあるが、執筆を進めることで持論を少しずつ形にしているという感触と、それによって、改良すべき弱点が目前に明確になっていくことが、同時に、初めて味わう喜びでもあることを実感したひと月であった。
 最後に、今年一年を通して、報告者の研究生活が順調に進み、成果発表が成されるよう支えてくださった、若手研究者インターナショナル・トレーニング・プログラム(ITP-EUROPA)関係者の皆様に、この場をお借りして感謝申し上げたい。報告者の研究が具体的な成果として形を現してきたことで、研究活動を通して、このプログラムの意義と重要性を改めて実感した年でもあった。ご支援とご指導に感謝しつつ、新年も引き続き博士論文完成へ向けて精進する所存である。

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