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2012年11月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2012年11月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 今月の最も有意義な出来事は、ドイツのヒルデスハイム大学に於いて開催された国際シンポジウム(Kultur im Spiegel der Wissenschaften)に参加したことである。参加者たちの研究発表と質疑応答を通して学ぶことが多かったことに加え、ITP-EUROPAプログラムのもとヨーロッパ各地で研究活動に邁進する本学の若手研究者らと話す機会が得られたこともまた、さまざまな面で励みとなった。
 報告者の研究発表は、イタリア語で行い、理解の助けとなるよう、パワー・ポイント資料には英語訳を付した。発表については、細かな反省点はあるものの、次回に活かすべき改善点や、より質の高い研究発表を目指しての新たな目標を明確に出来たことが、何よりの収穫であったといえる。題目は、Il corpo danzante della danza futurista, dell'Ausdruckstanz e del Butoh とし、発表では、イタリア未来派のダンス、ドイツ表現主義舞踊、日本の前衛舞踊「舞踏」を巡りながら「踊る身体」について考察することを試みた。これら三つの舞踊スタイルは(未来派ダンスについては「スタイル」と定義できないのだが)、それぞれに全く異なるダンスであるが、実際には、なんら共通の様式をもたないと同時に、いくつかの点で共鳴し合い、反応し合っていることが実に興味深い点である。この着眼点については、未来派ダンスを論じる博士論文の中でも取り上げる予定である。研究発表を終えた今は、予定されているシンポジウム成果論集の出版が心待ちにされる。
 国際シンポジウムでの研究発表と同時に、大きな励みとなったもうひとつの出来事は、査読を通過した研究論文がいよいよ出版されたことである。出版媒体は、ボローニャ大学公式オンライン学術誌、Danza e ricerca.Laboratorio di studi, scritture, visioni (Dance and research. Laboratory of studies, writings, visions)である(http://danzaericerca.unibo.it/)。刊行された冊子の目次に目を通してみると、舞踊研究の多様性が凝縮されていることが見てとれる。キーワードとして並べてみるだけでも、ドイツ表現主義舞踊から土方巽、コンテンポラリー・ダンス、そして、図像学、踊る人形のイメージ、ビジュアル・デザインとダンス、あるいは、演劇、映画とダンス、と幅広く、今後ひとつひとつ拝読するのが楽しみである。報告者の論文は、Il corpo danzante del futurismo: storia dell'aviazione e tentativo di volare danzando(『未来派の踊る身体―飛行の歴史と踊りながら飛ぶことへの挑戦』)と題されたものである。まさに題目に要約されている通り、未来派ダンスとは、飛行の歴史そのものであり、空を飛びたいという身体の飽くなき挑戦そのものである、という論旨で、19世紀の気球による上昇技術の発達と同時代のトウ・シューズによるポワントの技術によってうまれたロマンティック・バレエ、そして20世紀の航空技術、旋回する飛行技術と、未来派の航空ダンスへと考察を進めたものである。
 先月の月次レポートに報告させていただいたように、今回の論文発表で有意義だったことは、何よりも、イタリアの舞踊研究者による査読を通して、博士論文と今後の研究の発展に活かせるコメントや助言をいただいたことである。論文発表と国際シンポジウムにおける研究発表とを無事に終えた今月は、精神的にも、博士論文執筆作業のターニング・ポイントになったと実感している。

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