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2011年7月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2011年7月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 今月末をもって2010年度の派遣期間が終了した。はじめにこの場をお借りして、ボローニャ大学大学院での研究生活を支えてくださったITP-EUROPA関係者の方々に感謝の言葉を記したい。歴史ある大学の街ボローニャで、図書館などの学問施設の充実と、指導教員をはじめとする先生方からの惜しみないご指導によって得られた成果は、報告者の研究の可能性をより豊かなものにした。この一年間の蓄積を土台にして来年度も博士論文の執筆に励む所存である。
 今月の前半は、先月に続き、日本におけるイタリア未来派批評についての論文をまとめる作業を進めた。また、後半からは、イタリア未来派の活動のうち「第二次」という札付きで語られてきた活動期間に着目した、未来派の年代定義をめぐる考察を論文のかたちに仕上げる作業に入った。
 ウンベルト・ボッチョーニの死(1916)以降の活動期間の扱いについては、当時から手をこまねく批評もあれば初期の未来派とは無関係だと言い切る容赦ない批評もあるなかで、「新」未来派でもなく「ポスト」未来派でもない、「第二次」未来派と名付けることで、前世紀末にはこの問題についてかろうじて決着がついたかのようだった。しかし、2009年の未来派創立百周年を機にみられた未来派再考察の動きをまとめると、もはや「第二次」という断りを必要とせず、さまざまに伝播した多極的な創作活動そのものを包括する流れが見られる。このテーマについては、報告者は今年度の派遣開始と同時に着手し、イタリアの未来派研究の権威たちの異なる主義主張の変遷を研究ノートというかたちで既にまとめてあり、大まかな基盤を固めてあった。その後研究を進めながら新たに未読の文献、資料に触れる過程で、研究者や批評家らの興味深い意見に触れるごとにそれをノートに追加してきた。ここへきて十分に資料が整い、機が熟したと思えたのでいよいよかたちにするに至った。この議論は博士論文では序において表明される予定の、論文執筆の重要な立脚点のひとつであり、これを明確にできることは報告者自身にとっては確かな歩みを実感できるところである。
 博士論文については、この一年間の成果を反映させ、論文の構想をより具体的に改良し、ボローニャ大学指導教員であるチェルヴェッラーティ教授に改めてご指導を仰いだ。そして、当初課題として残されていたいくつかの弱点を日々の研究の積み重ねで強化できたことを指導教員からも認めていただいたことは、たいへん大きな励みになった。また、執筆にあたっての注意事項や構成についての改善点などをアドヴァイスしていただいたなかで、イタリア国内での未来派ダンスの再演出の諸例について非常に興味深い具体的な示唆をいただいた。これは論文の結論を補強する重要な項目として考察するつもりである。

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