トップ  »  新着情報  »  2011年5月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

2011年5月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

                    ITPレポート 5月
                                                                                                   小久保真理江

 今月はパヴェーゼの詩に関する章の執筆作業を進めたほか、大学でのセミナーやシンポジウムにも参加しました。
 論文については章の前半部分の原稿をロレンツィーニ先生とコランジェロ先生の元に持参し、それぞれからコメントをいただきました。指導教員であるロレンツィーニ先生からは、文体に関する細かな修整に加え、分析内容や論文の書き方についても大きな問題を指摘していただき、コランジェロ先生からは、より具体的な問題点とその改善策についてご教示いただきました。現在はその助言をもとに、原稿の書き直し作業を進めています。イタリア語で博士論文を執筆することの難しさを改めて痛感させられましたが、この経験を糧に学術的なイタリア語の運用能力を高め、より厳密で説得力ある議論を展開できるよう、精進していきたいと思います。
 今月ボローニャ大学のイタリア文学科では「19世紀から現在までの女性作家」というテーマのもとで10回のセミナーが行われました。月前半は外部から招かれた詩人や研究者によって様々な時代の女性作家についてお話があり、月後半の4回のセッションでは、学生の論文執筆に向けて、セミナーの主催者であるコランジェロ先生によりアカデミックライティングについての講義が行われました。イタリア語での論文の文体について以前から悩みを抱えていた私にとり、この講義は非常にありがたい機会であり、今後の執筆活動に大いに役立つ指針を得ることができました。いわゆる学術的な用語や言い回しを機械的に選ぶのではなく、様々な言葉の選択可能性を考慮し、それぞれの言葉の微妙な差異を把握した上で、最も的確な言葉を選ぶようにすべきであるという教えがとりわけ強く心に残りました。
 5月19日から21日までの三日間はシンポジウムに聴衆として参加するためローマに滞在しました。「アルベルト・モラヴィアとアメリカ」というテーマで、ジョン・キャボット大学にて三日間に渡り開催された大規模なシンポジウムであり、イタリアを初めドイツ・フランス・アメリカなど様々な地域の研究者の発表を聞く貴重な機会となりました。ファシズム期に「アメリカ神話」を築いたパヴェーゼがアメリカを実際に訪れることができなかったのに対し、同時代の作家モラヴィアは1935年にニューヨークを訪れています。その意味でモラヴィアとアメリカに関する議論は、現在執筆中の博士論文に新たな示唆を与えてくれるものでした。
 また、今月は論文のための資料文献についてコランジェロ先生とアスカリ先生に重要な情報をいただきました。お二人とも、偶然見かけた文献で、私の研究に役立ちそうなものがあるということでお忙しい中メールを下さり、大変助けられました。12月のITP国際セミナーでそれぞれディスカッサントとコメンテーターを務めて下さった先生方に、セミナー後もこうして助けていただけることを改めてありがたく思います。

 

  

 


 

このページの先頭へ