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2011年4月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

ITPレポート 4月
                                                                                              小久保真理江

 今月は学会参加と資料調査のため、短期派遣EUROPAプログラムによりアメリカのニュージャージー州へ渡航しました。参加したのは Northeast Modern Language Association(NeMLA)の第42回年次大会です。
 NeMLAは人文学研究者の組織で、様々な言語(英・伊・仏・西・露など)の文学研究者が所属しています。カナダ東部とアメリカ北東部の大学の研究者を中心とする組織ですが、北米の他の地域やヨーロッパの研究者も数多く所属しており、年次大会には様々な地域・国の大学から研究者が集まります。私はイタリアの作家チェーザレ・パヴェーゼとアメリカ文学・映画の関係について研究しているため、イタリア・アメリカ両国の言語・文化に通じる研究者が多く集まるNeMLAの年次大会は研究発表を行う場として理想的だと考え、この学会への派遣を申請しました。
 今年度のNeMLAの年次大会は、ニュージャージー州のニューブランズウィック市にて4日間に渡り開催されました。多領域の研究者が集まる大規模な学会であるため、数多くのセッションが複数の会議室で同時に進みます。今年は全体で350以上のセッション、イタリア関係のテーマだけでも50以上のセッションが開かれました。
 私が発表者として参加したのは、「Literature and the Arts: An Exemplar of Multicultural Understanding」というタイトルのパネルです。文学とその他の芸術との相互影響関係をテーマとしたこのパネルでは私も含め4人の研究者が発表を行いました。私は「Between Literature & Cinema, Between Italy and the United States: Representations of Class in Pavese's Work」とのタイトルで、パヴェーゼの詩とアメリカ映画との関係について、労働者階級の表象に焦点を当てながら論じました。
 この学会への参加は、ITP-EUROPA派遣中の研究成果を発表する機会としてはもちろん、執筆中の博士論文の方向性をより明確にし、新たな着想を得る機会としても貴重な経験となりました。また、イタリア語教育や移民文学などに関する他のセッションで学んだことは、将来の研究・教育活動に活かす予定です。
 学会終了後は、ニューヨーク公共図書館や近隣の書店で、博士論文の執筆に必要な資料・文献を閲覧・収集しました。帰国後は収集した資料文献を読み込む作業と並行して、博士論文の執筆に再び取り組んでいます。先月には学会の発表原稿を準備すると共に、博士論文の構想についても改めて見直し、より現実的・具体的な構想へと変更を加えました。現在は新しい構想のもと、学会での発表内容を膨らませつつ、パヴェーゼの詩に関する章を執筆しています。
 今回のアメリカへの短期派遣によって、NeMLAのような多様な地域・分野の研究者が集う学会に参加できたこと、そしてイタリアや日本で入手困難な重要資料・文献をこの機に閲覧できたことを大変ありがたく思います。関係者の皆様に、この場を借りて、心からのお礼を申し上げます。
 

 

 

 

 

 

 

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