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2011年4月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                                  (2011年4月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

 過ごしやすい天気に恵まれるこの時期はイタリアの学術的場面が最も活気づく季節でもある。実際に、今月は、ボローニャでも様々な学術的イベントが開催され、派遣者もそのうちのいくつかに参加し、さまざまな角度からの知的刺激を受けることができた。そうしたなかで特に印象深かったもののひとつは、派遣者の所属するボローニャ大学音楽・演劇映画学科にて開催された講演会「Nuovi orizzonti dell'iconografia: Il cinema tra pedagogia dei saperi e didattica disciplinare/図像学の新地平:知の伝達と制度としての教育のあいだの映画」である。映画学研究者をはじめ、教育学者、フィルムライブラリー関係者、演劇舞台監督や音楽業界関係者等、様々な分野の専門家が一同に会し映画の教育における有用性や具体的活用法、そのさらなる可能性をめぐり議論するこうした場に身を置くことでは、改めて、映画学の射程の広さを認識させられることとなった。また、ボローニャで毎年開催されるフューチャーフィルムフェスティバル主宰のマクルーハンの思想とニューメディアの現在と今後の展望をめぐる討論会「La consapevolezza integrale: tra arte e nuovi media/統合意識:芸術とニューメディアのあいだで」、及び、リュック・ベッソン講演会もそれぞれに新たな視角を得るための貴重な機会となった。
 その他の活動としては、今月も、講義に出席しながらの博士論文執筆作業を主として行った。今月半ばには、先月以来執筆をつづけてきたアキッレ・カンパニーレの小説の構造を映画特有の構造と比較して論じる節の執筆を終了した。「モンタージュ」、「視点」、「言語」をキーワードに論を展開した当箇所については、推敲作業を終え次第、指導教員へ提出し指導を仰ぐ予定である。推敲作業に並行してはまた、続く節の構想と執筆のための予備作業を行っている。具体的には、次節では、カンパニーレの笑いを20世紀を席巻した笑いの形態のひとつであるイロニーとの関連で論じることを予定しているために、関連書籍、論文の精読を行っている。
 ところで、論文校正作業の新たな協力者を得ることができたのも今月の大きな収穫のひとつであった。イタリア語で論文を執筆するということで、派遣者の論文活動に寄り添うチューターの存在は不可欠である。ボローニャ大学では外国人学生のためのチューターの紹介等は行っておらず、従って、必要に応じて個人的に人選を行い協力を要請する必要がある。派遣者は、これまでには、言語チェックを専ら行ってくれる友人の協力こそ得てきたものの、ひとりに依存するには負担も少なくなく、また、より高い客観性を保つためにも、もうひとりの協力者をボローニャ到着直後より意識的に探し求めてきた。適任者探索は実に難航をきわめたが、今回ようやく適任者と出会うことができ、ほっと胸をなでおろすとともに、こうした協力者の好意に報いるためにも、以降の研究活動にますます精進してあたる必要を改めて実感している。

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今月25日にはイタリア解放記念が祝われた。この日、ボローニャ市庁舎前壁面に設置される肖像写真付きパルチザン慰霊碑には花が手向けられていた。

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