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2011年3月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                 (2011年3月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

 今月はなにより通常通り図書館で作業を行っていた派遣者に友人が電話で知らせてくれた東日本大震災の報せに深く胸を痛めることとなった。外国の事象を研究対象とし、留学中の身であるということは、逆説的に、日本をことさらに意識することを意味する。遠くイタリアに居住中であるために直接的な物的害をこそ被ることはなかったものの、母国被災の報が派遣者にもたらした衝撃は決して小さなものではない。被災した方々へ、心からお見舞い申し上げるとともに、被災地の一刻も早い復興を願ってやまない。今回の震災のニュースは、現在に至るまで、イタリアでも連日大きな関心をもって報道されており、個人レベルでも、友人や関係者をはじめ町中や店先でも日本を見舞う声を多く掛けられている。この場を借りて、遠くイタリアから寄せられるこうした連帯の思いを伝えられたら幸いである。
 さて、今月も、講義に出席しながらの博士論文執筆作業を主として行った。引き続き、アキッレ・カンパニーレの小説の構造を映画特有の構造と比較して論じる箇所の執筆にあたっている。文学と映画の比較は、ややもすると、それらメディアに共通する手法の凡庸な羅列に終わる危険性があることから、それを避けるためにも、文学・映画比較研究関連文献はもとより映画学関連文献の精読も積極的に行い、また、問題意識を共有する研究者仲間に意見を求めたりするなどして、まずは派遣者の研究テーマ上有効な研究手法の検討を慎重に行ったうえで、構成を組み、執筆作業に取り掛かった。手法の検討に際して意識して念頭に置いたのは、映画イメージが具体的身体性を備える点、それゆえに、映画が人間の知覚に圧倒的な変容をもたらしうるという点、さらには、そうした映画と20世紀と笑いのいずれもが統合を志向するという点の計三点である。執筆がある程度進行した時点ではボローニャ大学指導教員に原稿を持参し、指導を仰いだ。現在は、カンパニーレのテレビ評論家としての功績を考慮に入れることで論がより豊かになるのではないかという指導教員の提案を受け、そうした角度からの考察を進めている。
 ところで今月17日はイタリア統一150周年記念日であり、各地で式典、祝賀行事が開催され、派遣者も式典や関連展示のいくつかを巡った。映画と20世紀と笑いにおける分離と統合とその行方について日々思いを馳せている派遣者にとり、イタリアのこうした歴史と経緯、現状をこの機会を得て改めて意識することはなおさらに意味深く思われた。

ishida3-2.jpgイタリア統一150周年記念式典にて、マッジョーレ広場市庁舎前に掲揚されたイタリア国旗。

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