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2011年3月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

ITPレポート 3月
                                                   小久保真理江

 4月上旬に参加予定の学会発表に備えて、今月は発表原稿の執筆作業を行いました。様々な領域の研究者が参加する大規模な学会のため、イタリア近現代文学の研究者だけでなく、他領域の研究者にも興味深く分かりやすい発表になるよう心がけました。学会ではチェーザレ・パヴェーゼの詩について、労働者階級の表象に焦点を当てながら論じます。発表時間が限られているため、テーマに関する議論を全て取り込むことはできず、当初の構想を変えつつ重要な点だけに議論を絞って原稿を執筆することとなりました。今回最終的に削った部分は、発表内容と共に博士論文のなかに取り込む予定です。博士論文の執筆作業では関心が様々なテーマ・作品に広がりすぎ、なかなか能率的に書き進めることができなかったのですが、今回の発表準備の際に分析対象を詩に限り議論を絞る作業を行ったことによって、思考が整理され、今後の博士論文の方向性もより明確に見えてきました。発表内容についてはボローニャ大学のコランジェロ先生に親切な助言と温かい励ましの言葉をいただきました。
 月末には「イタリアのファシズムと映画」についてのセミナーに聴衆として参加しました。今年はイタリア統一150周年にあたり各地で関連イベントが催されています。ボローニャのシネマテークではイタリアの歴史に関する映画上映やイベントが毎月時代順に企画されており、このセミナーもその一貫として催されたものです。ファシスト政権が大衆の同意を得るため映画という新しいメディアをどのように利用したのかなど、ファシズム政権下での映画状況について、他国との比較も交えた興味深い議論を聞くことができました。私の博士論文ではこの時代の映画や文学とポピュリズムとの関係が一つの重要なテーマであるため、セミナーは論文執筆のためのヒントを得る貴重な機会ともなりました。とりわけ以前から論文の相談にも乗っていただいているジャコモ・マンゾリ先生のお話では、20・30年代のイタリアにおけるアメリカ映画の圧倒的な人気や影響についての解説を聞くことができ、論文のための大変よい刺激となりました。


 

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