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2011年2月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                          (2011年2月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

  厳しい寒さが長引いた昨年と違い、今年のボローニャの二月は穏やかな天候に恵まれた。特に、立春頃からは春を感じさせる気持ちの良い天気の日が増え、研究活動の合間にやわらかな太陽の光を浴びながら散歩をすることで爽やかな気分転換を図ることができた。
 今月は、派遣者の所属する芸術・音楽・演劇映画学科(DAMS)映画学専攻の博士課程の新学期にあたり、月半ばから博士課程のゼミが開始された。今年度は、「Ecosistemi narrativi: spazi, strumenti, modelli(語りの生態系:空間と装置とモデル)」というテーマのもとに月に三度ほど関連講義が開講される。テレビ、ゲーム、インターネットから、ブログ、チャット、SNS等、日々ますます多様化しつつある各種メディアを対象とし、新しい語りの在り方をめぐるという派遣者の研究テーマとは直結しない議題ではあるが、映画・メディア学の現在を垣間見ることのできる貴重な機会となっている。
 ボローニャ大学全体としては後期が開始された今月初めからはまた、個人的な関心のもとに、20世紀演劇史がご専門のDe Marinis教授による講義「Teorie e culture della rappresentazione(表象理論と文化)」の聴講を開始した。当講義は、20世紀演劇における笑いの表象をめぐり考察をほどこすという、派遣者が映画・文学表象を対象として行っている研究と非常に似た関心と視点を備えるものである。現在は、笑いをめぐる理論とその実践の歴史を古代ギリシャから通時的にたどっており、笑いの理論史を論じた派遣者の博士論文第一章の再検討を促す機会となっている。ダイナミック且つ綿密なデ・マリーニス教授の分析は大変刺激的で、派遣者の研究活動に有益に作用している。
個人的な活動としては、今月はまず、派遣先大学指導教員の指導のもと、博士論文全体構成をめぐり若干の調整を行い、その新たな展望のもとで、引き続き、アキッレ・カンパニーレ論の執筆、及び、著作、関連文献の精読作業を行った。月半ばにはカンパニーレ論導入部の執筆が完成し、現在は、その推敲を重ねながら、つづく章の執筆準備を行っている。新しい章では、「モンタージュ」の概念を利用しつつ、カンパニーレ小説作品における語りの論法をめぐり考察を行う。書き上げた章に関してはまた、来月初めにも指導教員に提出し、指導を仰ぐ予定である。
  ところで、来月は、イタリアの多くの博士課程において博士論文提出期にあたるために、提出を控えた友人が論文の最終調整を行っている姿を図書館等で頻繁に目にした。派遣者自身も一年後に控えた論文提出に思いを馳せる機会となり、執筆のペースアップはもちろん、特に、今後はこれまで以上に計画的に作業をこなしてゆく必要があるとの思いを強めることとなった。

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