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2011年2月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2011年2月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 今月より大学院博士課程の講義が開講された。報告者が所属する演劇専攻の講義はねらいごとに三つに別れて組まれている。ひとつは、研究を進めるにあたっての方法論、そして、近年出版された研究書の著者を招いての講義、最後に、大学院人文科学研究の諸専攻と共同で行われるセミナーであり、それぞれ不定期に行われる。方法論を学ぶ講義は更に細分され、「舞踊を研究する」に始まり、「舞台空間」「場」「テキスト」「演出」「舞台衣装」「俳優」と巡って、身体、空間、演出と、劇場芸術全体を網羅する構図である。
 今月は早速、報告者のボローニャ大学における指導教授の講義「19世紀のあるバレリーナをめぐって―マリー・タリオーニ―」(Studiare la danza. Intorno a una ballerina dell'Ottocento: Maria Taglioni)が行われた。当時のバレエに関する一次資料が所蔵されている、アメリカとヨーロッパ諸国のオンライン・アーカイヴについてご教示があり、現在執筆を進めている論文のテーマと深く関わる題材であるだけに、非常に重要な情報を得た。
 また、新刊の研究書を介しての講義では、ボローニャ大学ビニャーミ教授が、舞台衣装を研究する学生へ向けて記された舞台衣装研究の手引き書(Paola Bignami, Charlotte Ossicini, Il quadrimensionale instabile. Manuale per il costume teatrale, Bologna, UTET, 2010)をもとに講義をされた。舞台衣装は舞台芸術の他要素に比較して学術的調査、またその保存が十分に行われてきていないのが現状である。教授は衣装のデジタル・アーカイヴ作成にあたって、ハンガーに衣装を掛けた状態で写真撮影がされていた先例を覆し、舞台衣装は四次元の芸術作品であるとの信念から、マネキンに衣装を着せた状態で写真保存を行った。ビニャーミ教授は舞台衣装の歴史について最良の研究書を執筆されており、そのご著書から未来派のダンスが舞台衣装の歴史にもたらした革新を手探りで学んでいた報告者にとって、直接講義を拝聴できたことは大きな励みとなった。
 言語運用能力の習熟が急務であることを痛感しない日はなく、イタリア語で耳から吸収し翻訳をせずにそれを反芻し、さらに原語のままアウト・プットするという一連の作業を自然に行えるようになることが火急の課題であり、毎度、能うかぎり一単語たりとも聞き漏らすまいとして講義に臨んでいる。

 

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