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2011年2月 月次レポート(小久保真理江 イタリア)

ITP 2月レポート
                                         小久保真理江

 今月は先月に引き続き、博士論文のなかの「社会階級」についての章に取り組みました。チェーザレ・パヴェーゼの作品における社会階級の描かれ方とアメリカ文学・映画との関係がこの章の大きなテーマです。関連文献・資料の量が多いため、執筆作業は予定より遅れ気味ですが、先行研究における議論を的確に把握した上で、独自性・説得力ある見解を提示できるよう、集中的に作業を進めています。月末にはボローニャ大学のコランジェロ先生から助言をいただきました。映像資料に関しては、先月トリノの研究者ヴァレーロ氏からいただいた資料をもとに、重要なデータを整理しました。
 先月末には応募していた学会の詳細なプログラムが発表され、4月9日にNeMLA(Northeast Modern Language Association)の年次大会で研究発表を行うことが正式に決まりました。現在執筆中のテーマについて内容を絞って二十分程度話す予定です。そのため今月は 発表原稿の構成も練る作業も行いました。
 大学院では今月、移民文学に関わるイベントが二つ開催されました。ひとつはアルジェリア出身でイタリア在住の作家Amara Lakhousがローマを舞台に書いた小説『Scontro di civiltà per un ascensore a Piazza Vittorio』についてのセミナーです。セミナーの主催者であるベンヴェヌーティ先生とゲストスピーカーであるパラーティ先生のお話のあと、大学院生・教授・研究者の間で議論が行われました。アメリカのダートマス大学でイタリア文学・比較文学を教えるグラツィエッラ・パラーティ先生は、イタリアの移民文学に詳しく、この小説についても、登場人物の移民たちと空間との関係を分析した論文を発表しています。セミナーではこの小説ついての論考だけでなく、パラーティ先生の社会学や哲学を取り入れた研究方法についても詳しいお話を聞くことができました。
 セミナーの後には、 移民文学に関する研究書『Certi confini: Sulla letteratura italiana dell'immigrazione』の出版記念イベントが開かれました。この本には、イタリア国内外の六人の研究者が移民文学について執筆した文章が収められています。出版記念イベントでは、執筆者それぞれのお話のあとに、聴衆を交えた議論が行われました。「移民文学」というカテゴリーの問題や、出版事情の問題、研究方法の問題などの他、イタリアの大学とアメリカ・フランスの大学との研究事情の違いも話題に上りました。
 ボローニャ留学中にこうしたイベントを通してイタリア国外の大学で働く研究者とも出会えることを大変嬉しく思います。これから将来イタリア文学の研究を続けて行く上でも、イタリアのみならず様々な国の研究者とのつながりを持つことが大切だと改めて実感した一日でした。

 


 

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