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2010年5月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                      (2010年5月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

 今月に入り、初夏らしい良い天気の日が増えてきた。今月も、基本的には、自身の論文準備に集中してあたる傍らで、博士課程在籍者のためのゼミ他各種シンポジウムに出席する日々を送った。作業は専ら所属学科図書館にて行ったが、まぶしくも暑すぎない五月の日差しを受けながらの移動は、室内で机に向かっての作業か闇のなかでの映画鑑賞を行うのが専らの派遣者の研究活動にあって良いアクセントとなった。
 今月は執筆というアウトプット作業よりも、文献読解、精読や映画資料の鑑賞といったインプット作業により多くの時間を費やした。なかでも比重をおいたのが映画学関連文献の読み込みである。先月末の派遣先大学指導教員による指導を受け、論文全体の見通しをたてるためにも、先月完成した初章に続く章の執筆に先立って、映画学的知識のより深い理解に努める必要があると判断したためだ。実際に、それら文献から得られる知見は、並行して進めている文学関連文献精読作業に有益に作用していると思われる。
 映画に関してはまた、鑑賞も積極的に行っている。派遣者が必要とするイタリア喜劇無声映画はイタリア各地の映像資料館やシネマテークに分散して所蔵されている。それら資料のなかでもVHSやDVDに変換されて保存されているものについては施設内にての視聴が可能な場合がある。たとえばボローニャのシネマテークの場合であれば、所蔵資料目録がHP上にて公開されており、その場で視聴したい旨を申し出るだけで利用できるという状況であるが、その他の映像資料館、シネマテークでは目録が一般に公開されていないケースも多く、それ故、所蔵資料については電話かメールを通じて施設に直接問い合わせをする必要がある。また、大抵の場合、利用に先立っては日時を指定しての視聴予約も必要となる。今月は、トリノ国立映画博物館附属映画館にてイタリア喜劇無声映画の上映があるとの情報を聞きつけ、この機会を利用して、トリノ国立博物館附属映像資料館を訪れることにした。規定に従い、前もって所蔵資料を問い合わせた上で予約をし、鑑賞を行った。計ったわけではないものの、映画関連文献の読解に集中してあたっていたこの時期に、映画創成期のイタリアにおいて中心的な役割を果たしたばかりでなく、実際に、イタリア喜劇無声映画の多くの撮影が行われた地であるトリノを訪れることができたことは派遣者にとり喜ばしい経験となった。

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トリノ国立映画博物館内部の様子。トリノのシンボルとして知られる塔モーレ・アントネッリアーナ内に設置されるというそれ自体がスペクタクルな構造をもつ博物館である。中央をガラス張りのエレベーターが通り、きわめて幾何学的な街並みでありながら自然にも恵まれる美しいトリノの町を一望できる展望室へと昇ることができる。

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