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2010年2月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
             (2010年2月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

  今月より後期講義が開始された。派遣者は、今期は、派遣先大学指導教員による「イタリア映画史」のみを受講し、残りの時間は専ら自らの研究に充てることとした。講義は、実際のフィルムの上映と併せて、イタリア映画の歴史を黎明期から現在まで辿るものである。『カビリア/Cabiria』や『アッスンタ・スピーナ/Assunta Spina』等、イタリア映画を代表するフィルムばかりでなく、ファシスト政府の映画製作公社LUCE(教育映画協会/L'Unione Cinematografica Educativa)によるニュース映画をはじめとした貴重なフィルムの数々も鑑賞することができ、派遣者の研究にとり、大変有益な機会となっている。
  自身の研究に関連しては、まず、先月より引き続き作業を続けている『笑いと創造(第六集)』(ハワード・ヒベット、文学と笑い研究会編、勉誠出版)投稿用論文の最終推敲を済ませ、本提出を行った。そして、その作業終了をひとつの区切りとし、本格的に博士論文の執筆を開始した。これまでにも数頁を書き進めては、納得ができず、新たな稿を起こすという試行錯誤を繰り返してきた。しかし、今回は、同じ稿を定期的に書き進めており、以前と比べると先の見通しも立っていることもあり、ようやく作業が緒に就いた感がある。書き上げた原稿は、推敲を重ね、知人のネイティブ・スピーカーによる言語チェックを経た上で、指導教員のもとに持参し、指導を受けている。作業がようやく軌道に乗ったことへの満足感もある一方で、作業の進展が予定より大幅に遅れているのも事実であり、今後、ややペースアップをしてゆく必要を感じる。なお、現在は、論文の導入部にあたる、古代から20世紀に至るまでの笑い理論の歴史の概観を執筆している。
  自身の研究に関してはまた、先月から集中して行っているイタリア喜劇サイレント映画の鑑賞も引き続き行っている。今月は特に、今月上旬に借りた同素材を中心的テーマとした指導教員の博士論文の精読と併せて行うことで、先月よりは視野が若干の広がりをもったように思えるが、同時に、独自の鑑賞眼養成のためにも、もっと数多くの作品にあたる必要も切実に感じる。
  ところで、今月24日、25日には、大学院教育改革支援プログラム「高度な言語運用能力に基づく地域研究者養成」の一環として、ローマ大学にて東京外国語大学・ローマ大学合同セミナーが開催された。本学側指導教員である和田教授をはじめ、大学院博士課程で派遣者と同じゼミに属する面々が日頃の研究の成果をイタリアの地で披露するとあって、開催の報せを受けて以来、派遣者も参加を心待ちにしていた。派遣者が参加した25日のプログラムでは、本学博士課程在籍者とローマ大学博士課程在籍者、及び、教授による研究発表が行われ、大変刺激的な経験をすることができた。同時に、イタリアを研究対象とする日本側参加者と、東アジアを研究対象とするイタリア側参加者の発表は、テーマこそ様々であるが、自分の慣れ親しんだ地域から遠く離れた地域を研究対象としている点において共通しており、そうした視点を有する研究の意義を、きわめて個人的なレベルでも、再確認する機会ともなった。

  Ishida2-1.JPG                                東京外国語大学・ローマ大学合同セミナー会場にて

 

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