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2010年12月 月次レポート(横田さやか イタリア)

月次レポート 2010年12月 
博士後期課程 横田さやか 
派遣先:イタリア、ボローニャ大学

 今月の最大の成果は、東京外国語大学とボローニャ大学の共同企画によって開催されたITP-EUROPA国際セミナー「文化的鏡像の諸相 地理−批評学/文学の考察 日本とヨーロッパ」において、研究発表をさせていただいたことである。報告者は、「踊る身体と飛ぶ身体―マリー・タリオーニからジャンニーナ・チェンシへ―」(Il corpo danzante e il corpo volante da Maria Taglioni a Giannina Censi)という題目のもと、19世紀のロマンティック・バレエと未来派のチェンシ(1913-1995)によるバレエとを、空を飛ぶ身体という視点から考察した。テーマ設定の段階からボローニャ大学での指導教授エレーナ・チェルヴェッラーティ教授にご指導を仰ぎ、発表内容の論点を裏付けるに必要な資料について、とりわけ19世紀前半に書かれたバレエの教則本についてご教示いただいた。この作業を通じて、結果的に未来派のダンスを博士論文で論じるにあたっての報告者の視点の据え方をより明確に教授に伝えることができ、この意味においても大変ありがたい機会となった。また、セミナー当日コメンテーターを務めてくださった同大学マッテーオ・カザーリ教授からは、発表内容に止まらない広い視点から博士論文を見通しての非常に有意義なご教示を仰ぐことができた。そして、このように研究発表というかたちで、東京外国語大学での指導教授和田忠彦教授に研究の進捗状況を報告できたことは、今後研究活動を継続していくうえでのなによりの励みとなった。セミナー後は、発表内容を論文のかたちに加筆修正するための作業に専念した。
 一次資料を補足強化する目的として、トレント・ロヴェレート近現代美術館(Museo d'Arte Moderna e Contemporanea di Trento e Rovereto)とその附属アーカイヴを訪れた。この美術館は、北イタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ州に位置する小さな街ロヴェレートにある。20世紀のイタリア美術、建築に関する貴重な資料が所蔵されている当アーカイヴには、未来派についての、とりわけ第二次未来派といわれる時期の活動にまつわる当時の雑誌記事、写真、映像資料等が充実しており、報告者はこれまでも度々足を運んで調査を行ってきた。今回は、研究発表の中で採り上げた未来派画家トゥリオ・クラーリ(1910-2000)が、アーカイヴに寄贈した1930年前後の雑誌記事等の資料を調査し、その時期のクラーリの活動と航空絵画作品についていくつか厳密に明らかにしておきたい点を確認する作業を行った。完成させた論文は、ダンス・スタディーズに関するイタリアの研究誌に投稿することを目標にしている。

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写真:ロヴェレートの目抜き通りの様子。地元の特産物やクリスマスの飾り物を売る屋台が立ち並ぶ風景はクリスマス前のこの街の名物である。

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