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2010年10月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                           (2010年10月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

  政治的混乱に伴い新学期の開始時期が急遽延期されたボローニャ大学でも今月に入ってからは順次講義もスタートし大学構内に数ヶ月ぶりの賑やかさが戻ってきた。派遣者も、今月初旬に開講した初期映画を専門とするカノーザ教授による講義「映画学/Filmologia」に出席しつつ、博士論文の執筆にあたるという、新しいリズムでの研究生活を開始した。
  自身の研究の進捗状況に関しては、まず、先月推敲を終えた第三章第二部を指導教員に提出し指導を仰いだ上で、若干の訂正、再考作業を行った。また、12月にITP-EUROPA主宰で開催が予定されているシンポジウムで行う発表のテーマについても、指導教員と面会して相談をした上で概要を決定した。その後現在までは、先月より準備、執筆を開始した第三章第三部に係る作業を進めている。先月同様のパラッツェスキの小説『ペレラの法典』の主人公ペレラの煙でできた身体と笑いの身体性を比較して論じる箇所である。執筆が予定より遅れ気味であることから特に今月下旬に至って以降は若干の焦りを感じながらも慎重に執筆のペースアップを図っている。
  ところで、今月初めには、イタリア北東部に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州の中都市ポルデノーネにて無声映画祭が開催された。今年はフランス無声喜劇映画特集が予定されていると知り派遣者もあらかじめ参加登録を行った上で現地へと赴いた。派遣者が主に参照するのはイタリア無声喜劇映画ではあるが、当時の喜劇映画界における伊仏間の交流はきわめて盛んで、実際に、当時のイタリア喜劇映画において中心的な役割を担っていた喜劇人のほとんどがフランス出身であったという事情に加え、少なくともイタリア国内のフィルムライブラリーにおいては所蔵目録が非公開であるところが多く、これまでに映像資料調査をめぐっては少なからぬ困難に遭遇してきた派遣者にとっては、今回の、実に60本以上のフィルムが一挙に上映されるという情報はにわかには信じ難いほどのビッグニュースであった。そして実際に、1907~1914年に製作されたフランス喜劇映画を集中的に鑑賞するという体験は他に代え難い印象と考察への新たな視点を派遣者に提供してくれる契機となった。同時に、関心を共有する研究者と交流する機会となった点でも今回の映画祭参加は派遣者にとり大変貴重な機会となった。


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ポルデノーネ無声映画祭にて。第29回を数える今回のメインイメージは『大学の若旦那』(清水宏監督、1933年)から。


 

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