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2009年11月 月次レポート(石田聖子 イタリア)

月次レポート
                     (2009年11月、博士後期課程 石田聖子)(派遣先:ボローニャ大学 [イタリア])

 今月は、大学の前期講義の第一部が終了し、第二部が開始される時期であるため、時間割を組み換え、新たなリズムでの生活を開始した。
 そんななか、派遣者にとっての今月のメインイベントは、派遣者が所属するボローニャ大学文哲学部芸術・音楽・演劇映画学科(DAMS)で定期的に開催される博士後期課程の学生の研究成果定期報告会であった。派遣者も、報告書を準備し、指導教員と数度に渡る打ち合わせを行った上で、会合に参加した。報告会は、演劇映画学科の博士後期課程に属する学生総勢約30人と同学科の教授が一堂に会し、簡単に連絡事項が告げられた後、学生が順番に各々の研究内容と研究の現状、及び、今後の計画の概要を5~10分程度にまとめて発表し、教授陣からコメントや批判を受けるという形式で行われた。派遣者にとっては、今回が初めての報告会であったため、自己紹介と研究内容の紹介を最初に行った上で、今後の展望について簡単に報告をした。派遣者は、それまで専ら文学の分野で研究活動を行ってきたことから、発表後は、映画と文学の関係についての質問を頂戴した。質問内容については、事前にある程度の予想がついたものの、その場の緊張も手伝い、満足に回答することができず、こうした場でより適切な対応をとることが、映画分野における考察も充分に加味したより詳細な研究成果呈示とともに、半年後に開催される次回の報告会に向けての課題として残ることとなった。
 ところで、イタリアの博士後期課程では、毎週開催されるゼミもなく、指導教員による指導も、個人的に指導教員にコンタクトを取り、受けるのが通例であるために、他の博士後期課程の学生と普段はなかなか交流する機会がない。そのため、今回の報告会では、他の学生の研究内容を知るばかりでなく、学生たちと実際に顔を合わせ、意見交換をすることができたという点でも、刺激的で、得がたい機会となった。
 個人的な研究活動においては、今月は、専ら日本で発表するための論文執筆を行った。派遣者が卒業論文時以来対象とし、博士論文でも扱うこととなるCesare Zavattini(チェーザレ・ザヴァッティーニ)の初期文学作品における笑いの考察を試みるものである。派遣期間中、及び、博士論文準備期間中という貴重な時期に取り組むこともあり、博士論文の構想を念頭に置いて主題の選択を行うなど、慎重に作業を進めている。
 生活の面では、今月初めに、到着以来の仮住まいであった郊外の長期滞在者用ホテルより町の中心地に位置する新居への引っ越しを行った。加えて、出発前に日本から船便で送った文献が(かなりの遅延の末)無事に到着したことで、生活がいよいよ落ち着いてきた感がある。何よりも、新居が、派遣者の所属する学科の図書館から徒歩三分ほどに位置しているため、細切れの時間にも図書館を気軽に利用できるようになったことが最大の利点である。ただ、新居入居後、インターネットの電波が新居のある地区を充分にカバーしていないことが明らかとなり、半ば憤りながらも、やはり不便なため、自宅に回線を引くことに決め、月末に至り無事回線開通と相成った。インターネットの利用にただならぬ制限のあった(天井付近に微弱な電波が入る時間・曜日帯があることが判明し、大変に不自然な体勢で利用することとなった)この一ヶ月間は、しかし、それまでに無駄にコンピュータの前で費やしていた時間を有意義に活用するには充分に意義深い期間となった。

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