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2013年9月 月次レポート(近藤野里 フランス)

ITP-EUROPA
月次レポート2013年9月

近藤野里(パリ第8大学)

 9月に入り、フランスの大学では新年度が始まりました。登録上、今年度から博士2年目となります。今学期もいくつかの授業に出席しています。まず、指導教員であるBrandao de Carvalho教授の音韻論の授業を聴講しています。授業の内容は音韻理論の発展において中心となったいくつかの理論(プラグ学派構造主義、アメリカ構造主義、生成理論など)、そしてそれぞれの持つ問題点について論じるものです。次に、私の所属するラボが主催している博士ゼミへ参加しています。このゼミは言語学の博士課程の学生がそれぞれ、学会発表の予行練習のための発表、それぞれの博士論文の進捗状況の報告を行います。来年1月にケンブリッジ大学で行われるSociete Internationale de Diachronie du Francais (フランス語通時言語学国際学会)で発表することになっているため、12月の博士ゼミでは発表の予行練習をする予定です。
 博士論文の進捗状況については、まずRene Milleran (1692) の文法書La nouvelle grammaire francoise.の電子化を9月末に無事終えることができました。この文法書は博士論文で使用するコーパスとなります。10月は完成したコーパスのデータ処理を進める予定です。
 博士論文の内容に関しては、Milleran (1692)の文法書自体についての説明部分を書き進めているところです。今月行ったこととして、まずMilleranが文法書を書いた目的の考察が挙げられます。次にMilleranによる綴り字の説明から、どのような音韻体系が存在していたのかについて調査しました。これについては、先行研究であるCrevier (1992). La liaison a la fin du XVIIe siecle dans la Nouvelle grammaire francoise de Rene Milleran, de Saumur. These de Ph.D. Montreal : Universite de Montreal.でも要約されていますが、自分自身でこの文法書を全体的に読むことでMilleranが話していたと考えられるフランス語の母音体系および子音体系を再度考察することに努めました。
 今月初旬にはBrandao de Carvalho教授との面談がありました。今回の面談では主にフランスに提出する予定の博士論文(Variations sociolinguistiques dans le systeme vocalique du francais parle. - Etude sur un corpus de films des annees 1930、和訳:フランス語話し言葉における母音体系の社会言語学的変異 -1930年代フランス映画コーパスを用いて-)の研究計画について話し合いました。今後は、まずコーパスとして使用する映画を1本選び、文字起こしを行い、発音の特徴を観察することを勧められました。

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