東京外国語大学語学研究所

ウクライナ語(1/4)

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基本データ

ウクライナ語 / Українська мова / Ukrainian

系統 インド・ヨーロッパ語族スラヴ語派の東スラヴグループの一つ
主な使用地域 ウクライナ(正式名称は同じでウクライナ)
話者人口 母語話者 約4000万人以上
公用語として用いる国 ウクライナ
教育言語として用いる国 ウクライナ
使用文字 キリール文字
主な使用地域における他の言語 ロシア語、ベラルーシ語、ポーランド語、チェコ語、ロマ語など

話者人口

1989年度の調査によれば、ウクライナの総人口は5170万人。 そのうちウクライナ人は3740万人で総人口の72.3%(ロシア人は1140万人で総人口の22%)である。ウクライナ人の12.2%がロシア語を母語とし、ロシア人の34.4%がウクライナ語を準母語とするので、本国では話者人口約3680万人、本国以外の、ロシア連邦(436万人)、カザフスタン、ポーランド、カナダやアメリカ合衆国などの南北アメリカ、オーストラリアなどに住むウクライナ語話者を計算に入れるならば、話者人口の合計は少なくとも4000万人以上になる。 スラヴ語のなかではロシア語につぎ第二位の話者人口である。

言語をめぐる歴史

スラヴ祖語(スラヴ諸語の共通の先祖)から分かれた古期ロシア語は、8~14世紀の間に統一性を失い、 現代のウクライナ語、ロシア語、ベラルーシ語と分かれていった。 ウクライナ語の特徴は12世紀頃までには形成されていたにもかかわらず、様々な近隣諸国に支配され、世界史上類まれなほど頻繁にウクライナ語使用禁止令がしかれた。そのため言語の直線的な発達は阻害された。このような禁令にもかかわらず、母語による創作活動を続けたI.コトリャレフスキー (1769-1838)やT.シェフチェンコ(1814-1861)、P.クリシ(1819-1897)の作品および思想が、民衆の話し言葉を核として、 教会スラヴ語(スラヴ世界初の文語である古代教会スラヴ語が東スラヴ語の特徴を取り入れたもの)の要素を取りこみ彫啄したのが現代ウクライナ語の基礎である。禁止令が部分的に解かれたのは1905年、完全かつ実質的に解かれたのは1991年の独立の時である。

言語に関する状況

長期にわたる異国支配の下、とくにロシアの支配下で執拗に使用禁止令がだされた結果、 ウクライナ語はおもに心ある知識階級の一部と地方、農村部で話される言語となっていた。ソ連邦時代には1920年代の一時期を除くと、ウクライナ語を用いることは反革命的行為とみなされて、社会生活上著しく不利益をこうむり、公には使用が困難であった。1991年の独立後はウクライナの公用語とされ、現地では「失われた時を求めて」積極的にウクライナ語を含む民族文化の教育が行われている。 なおロシア語などの少数民族集団の言語も憲法でその育成、使用が保証されている。