アラビア語における数の文法
- 基数詞・序数詞の仕組みと性の問題 -
【 数詞についての予備知識 】
数の数え方を学ぶ前に、ここでいくつかの数詞についての予備知識をまとめたいと思います。
数詞「1」
基数詞の1には、2つの形があります。それぞれの男性形と女性形は以下の通りです。
男性形
وَاحِدٌ wāḥid أَحَدٌ ’aḥad
女性形
وَاحِدَةٌ wāḥidah إِحْدَى ’iḥdā
【واحد と واحدة
の用途】
この形は、1の位を単独で表すالعدد
المفرد [
al-‘adad al-mufrad
] の用法と、2つの数詞を接続詞ワーウで結んで作るالعدد
المعطوف [
al-‘adad al-ma‘ṭūf
]
用法における1の位の部分に使われます。
【أحد と إحدى
の用途】
この形は、数詞11をつくるときに用いられます。アラビア語では21・・・91という数詞の1の位にこの形の数詞「1」が用いられていることがありますが、厳密な意味では好ましくないそうです。
数詞「2」
基数詞には、男性形と女性形があり、いずれも双数名詞と同じ語尾変化をします。双数を示すヌーン(ن)が12という数詞で脱落するという点などは要チェックです。
このように、双数的な語末変化をする数詞「2」ですが、この語には元になる単数が存在しません。双数だからといって、「اثن」とか「اثنة」といった単数形があるわけではないのです。
対格 |
属格 |
主格 |
男性形 |
اِثْنَيْنِ |
اِثْنَيْنِ |
اِثْنَانِ |
女性形 |
اِثْنَتَيْنِ |
اِثْنَتَيْنِ |
اِثْنَتَانِ |
数詞「8」
数詞「8」の男性形と女性形は以下のようになります。
対格 |
属格 |
主格 |
男性形 |
ثَمَانِيًا |
ثَمَانٍ |
ثَمَانٍ |
女性形 |
ثَمَانِيَةً |
ثَمَانِيَةٍ |
ثَمَانِيَةٌ |
「تمييز
العدد」(tamyīz al-‘adad)(=数の弁別)
」のために、「数える対象となる名詞(المعدود)(al-m‘adūd)」を直後に持ってきた場合は、以下のような形になります。
対格 |
属格 |
主格 |
男性形 |
ثَمَانِيَ ~ |
ثَمَانِي ~ |
ثَمَانِي ~ |
女性形 |
ثَمَانِيَةَ ~ |
ثَمَانِيَةِ ~ |
ثَمَانِيَةُ ~ |
数字「18」の前半部分(1の位)に男性形の「8」を持ってくる場合は、ヤーが現れる後者の形がとられ、その上にファトハ(母音「a」)がつきます。
数詞「10」
アラビア語の数詞「10」に含まれるアルファベット「ش」につく母音記号は、数える対象となる名詞(المعدود)(al-m‘adūd)の性によって決まります。
【数える対象となる名詞が男性の場合】
数える対象となる名詞(المعدود)(al-m‘adūd)が男性名詞だった場合、「ش」につく母音記号はファトハ(母音「a」)となります。
عَشَرَة ‘asharah
[ 数える対象が10;数詞の性は逆になるのでター・マルブータつきの女性形 ]
عَشَرَ ‘ashara
[ 数える対象が11〜19;「10」部分は同じ男性で、ター・マルブータはつかない ]
注:11〜19では「10」の部分の語末格母音が常にファトハとなります。
【数える対象となる名詞が女性の場合】
数える対象となる名詞(المعدود)(al-m‘adūd)が
女性名詞だった場合、「ش」につく母音記号はスクーン(無母音=子音のみで母音が後に追加されない)となります。
عَشْر ‘ashr
[ 数える対象が10;数詞の性は逆になるのでター・マルブータなしの男性形 ]
عَشْرَةَ ‘ashrata
[ 数える対象が11〜19;「10」部分は同じ女性で、ター・マルブータがつく ]
注:11〜19では「10」の部分の語末格母音が常にファトハとなります。
数詞「20、30、・・・80、90」
10の位を示す、20、30、40、50、60、70、80、90は、男性規則複数の形をとります。そのため、数える対象となる名詞(المعدود)(al-m‘adūd)のいかんに関わらず、女性を示すター・マルブータをつけて女性形をつくることが許容されません。
数詞「100」
「مائة (ミア;100)」という単語に発音とは関係の無い「アリフ(ا)」が書き足されるのは、アラビア文字に弁別点が一切無かった時代に(注:詳細については別のページを参照)、表記上は同じ形をしている別の単語(「منه
(ミンフ;彼/それから) 」など)と区別していたことに由来すると言われています。
単独で書かれる場合、双数形として用いる場合、もしくは3、4、5、6、7、8、9と組み合わせて300、400、500、600、700、800、900という語を形成する場合、この「アリフ(ا)」つき表記が使われます。
しかし、複数形になった場合や、ニスバ形容詞になっている場合には、「アリフ(ا)」無しの表記が用いられます。
ただし、カイロアラビア語アカデミーは、表記の簡易化のため、アリフ無しの数詞「100」の使用を大幅に認めています。
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