出来事には、その出来事を引き起こす「動作主」と動作主の行為が向けられる対象である「被動作主」が存在します。同じ出来事でも、動作主が被動作主に対して何かを行うという述べ方もできれば、被動作主が動作主の行為を受けるという述べ方もできます。前者のような述べ方の文を能動文、後者のような述べ方の文を受動文といいます。
これまでに学んだ文はすべて能動文でした。ここでは、マレー語の受動文のうち、被動作主が迷惑・被害を被ることを示唆する、kena迷惑受動文を学びます。マレー語の受動文には他に、di-受動文と裸受動文があります。結果状態を表す ter-動詞文も受動文です。
kena迷惑受動文は主に口語で用いられます。そのため、動詞は普通、接頭辞の付かない形が用いられます。動作主を表す表現は、行為者が問題にならない場合には省略できます。
被動作主 (A) kena 動詞 (oleh/dengan 動作主 (B)).「Aは(Bによって)~される」
Pencuri
itu
kena
tangkap
oleh
polis.
「その泥棒は警察に捕まった。」
Kesian,
kawan
saya
kena
tipu
dengan
seorang
perempuan
mata duitan!
「かわいそうに、友達は金目当ての女に騙されちゃったんです!」
Dompet saya
kena
curi
dalam
kereta api .
「私は電車で財布を盗まれました。」(直訳:「私の財布が電車で盗まれました。」)
動作主を導入する前置詞 oleh/dengan は、動詞の直後であれば省略できます。その場合、動作主と被動作主の区別が曖昧になるので、kena が「~しなければならない」という義務を表す能動文と表面上区別が付かなくなります。能動文なのか受動文なのかは文脈から判断することになります。
Pencuri
itu
kena
tangkap
polis.
①「その泥棒は警察に捕まった。」(受動文;通常の文脈ではこの解釈)
②「その泥棒は警察を捕まえなくちゃいけない。」(能動文;通常の文脈ではあり得ない解釈)
Polis
kena
tangkap
pencuri
itu.
①「警察はその泥棒を捕まえなくちゃいけない。」(能動文;通常の文脈ではこの解釈)
②「警察はその泥棒に捕まった。」(受動文;通常の文脈ではあり得ない解釈)