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2020年8月 アーカイブ

2020年8月 2日

公的な場所としての図書館を考える、ような

梅雨の明けた日曜日。ひゃっほー!やりたいことといえば、もちろん!映画館に出かけることである。もらった(?この間確認した時にはまだ振り込まれてなかったが)ナントカ給付金の一部分を、自粛期間中にフライングして「ミニシアターエイド」応援に投じたので、そのフィードバックの一枚を行使すべく、今日はアップリンク吉祥寺に行くことにした。目当てはエミリオ・エステベス監督の『パブリック 図書館の奇跡』(2018)である。先日、この映画の評価(たぶん新聞の映画評か何かだ)をみたときには、昨年だったかに観たF.ワイズマン監督の『ニューヨーク公共図書館』(2017)に通じる何かだろう、撮られた時期もあまり変わらないし、とうっすら想像した。ワイズマンのこの映画については、いつぞや拙ブログでも取り上げさせてもらった通りである。
たしかにどちらも現代アメリカの、どちらも図書館の話しで、アメリカの歴史にも触れる部分があり、そして図書館員さんたちが重要な役割を果たしている。人びとの公的な居場所という共通するテーマや問題意識があるともいえる。しかし!両者はまったく似ていなかった。ワイズマン監督の映画は、巨大でグローバルな文化都市ニューヨークの伝統ある図書館のドキュメンタリーで、流れる音楽も映画の調子もクラシック、美しく重厚であった。一方、『パブリック』の方は、オハイオ州シンシナティのダウンタウンにある図書館を舞台にしたフィクションで、あちこちに笑いのネタがしかけてある。だが笑いながら次第に引き込まれて観ていくと...。クライマックスに迫るシーンでは、おもわず胸がつまる(実際少し泣き、マスクを濡らしてしまった)。いや、これはヤバい。ともあれ必見である。大お勧め!

2020年8月14日

「野蛮の言説」とBLM

時節柄、研究会をするのも憚られる今日この頃だが、去る11日(火)には、ぜひやりたかった研究会を実現することができた。科研の研究会として、2月に新著『野蛮の言説』を刊行したN氏をお招きしたのである。気になるならオンラインでもとご依頼したところ、ぜひ対面で(この頃はオフラインでというらしいが、それでは髭のないモナリザ(デュシャン)と同じくらい倒錯である)とご快諾いただいたので、かなり引き気味な大学施設課様に拝み倒して(?)、いつもとは別の建物で「厳重警戒」を遵守しつつ、オンラインと対面の混合形式で開催した。ちなみに科研メンバーはじめ大人参加者はほとんどがオンラインだったが、それでも会の後半にアフリカ研究のT先生がいらしてくださった!多謝!しかしそれ以外で会場にいたのは、ゼミの院生と学部生だけだった。

この書物、大学生向けの講義の形式をとっているが、野蛮の言説つまり直接には黒人差別の言説(しばしば「科学」に裏打ちされた)の系譜をたどりながらベルギーによるコンゴ人の大虐殺、ナチズムのジェノサイドを経て、最後は日本の関東大震災時の差別、731部隊のこと、そして現代のヘイトクライムややまゆり事件と現代日本の問題に踏み込んだ、たいへんな力作である。2020springtext.jpg
実際、学部ゼミの輪読にも用いたので、当日は研究会に先駆けて30分ほど、ゼミ生とN先生の対話セッションを設けた。このときの質問やコメントは、ほとんど最後の日本に関する部分に集中したのだった。
研究会の方では、少し踏み込んで昨今のBLMつまりブラックライブズマターを副題に掲げた。この書物自体、まさにBLMであり、そしてそれは2020年の問題にとどまらない。とりわけ科研とのかかわりでは、現代のグローバル経済までつながる西洋中心の世界システムが、奴隷貿易や奴隷制なしには成り立ちえなかった歴史に、社会科学はまともに向き合う必要があるということである。議論は進化論、そもそもの進歩という理念について、またジェノサイドと歴史、あるいは野蛮の言説を生み出す制度としての国家など多岐にわたり、大いに充実した時間となった。会場を支えてくれたゼミ生たちの存在、院生諸氏の献身的な技術サポート、活発な議論やコメントは、ゲストのNさんにも印象深かったそうである。ゼミ生たちにひたすら感謝である。
研究会終了後、これも迷ったのだがせっかくの機会なので、Nさん、ゼミ生数名といつもの寄り道へ。おかみさんが「密を避けて」と大きな場所を大盤振る舞いであけてくれて、ゆっくり話せた。ああ、これこれ!ここでも誠実にじっくりと話をしてくれるNさんにゼミ生諸氏は惚れ惚れと聞き入り、とてもゆたかな宴であった。たしか浜矩子さんが書いていたが、コロナ禍で必要なのはソーシャルディスタンスではなく物理的なディスタンスであり、ソーシャルディスタンスはむしろなんとか回避して社会性を保たなければならない。たしかに、頭と心が深く喜ぶところには、やはり身体を通じた人と人との出会いが一番である。がんばって現場にきてくださったゲストのNさんに、心から感謝したい。

2020年8月23日

怒涛の...新型集中ゼミ

拙HPにも書いたのだが、去る21日(金)に夏の恒例の集中ゼミ、すなわち卒論・ゼミ論中間報告会&1名の修論報告会を開催した。大学の立ち入り禁止期間のことなどもあって、例年より一ヵ月弱遅めになり、また初めての対面とオンラインの混合型の開催である。3年ゼミの半数ほど、4年ゼミ、院ゼミのほとんどが会場参加し、意外と現地は例年のような雰囲気であった。先日の研究会でコツを身につけた院生諸氏の獅子奮迅の活躍の下、朝から晩までの長丁場を、会場のメンバーもオンラインのメンバーも、なんとか最後まで集中して議論することができたようだ。のみならず、そうでなければ参加は難しかったカナダや長野県からの遠隔参加、そしてゲストの対面参加(Yひで、元TAさん!)もあって楽しかった。みなさん、ありがとうございますー。

時節柄、終了後の公式打ち上げはなかったが、有志という名の結構多数がいつもの寄り道に...。とはいえ入店時、すでに20時は過ぎていただろうから、乾杯して少し食べて、ばーっとしゃべって(マスクはしてました。ご安心を)いたら、22時閉店につき、あっというまにラストオーダー。それでも話しが尽きずに居座っていたら、おかみさんの度量で、もう一杯づつだけ(R平は一度に三杯たのんだ...?)追加オーダーをみとめてもらった。何とも心憎い配慮である。おかみさん、ありがとう~。そのときのゼミ生諸氏の嬉しそうな顔といったら...!

オンライン参加者も多いからと、中山カメラはもってきていなかった。のでスマホ撮り赤目凡作写真!ではありますが、せっかくだぜ、えいっ、アップロード!いつもと少し別アングルでー。(Tよはうまく撮ってくれたね)

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はいっ、みなさま、たいへんお疲れさまでした!オンライン参加者のスクリーンショットも今度またアップしてみたいですー(yくん、どうやるのかしら?おほほ)。
そうそう、以前に拙ブログに書かせていただいたポランニーの論考集、2014年の国際ポランニー会議の成果であるが、上記の怒涛の会合を終えて帰宅したら、家に届いていた。ふう。こうしてまた、一つの季節が終わり、次の季節が来るのだとしみじみ思う。-コロナ禍であってもなくても。
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