あなたに負う(IOU)
先週末の日曜日は、若き俊英Sさん(そう、研究にも仁義を切るあのSさんである)の主催する「負債」の研究会の第一回が行われた。中堅、若手の文化人類学者を中心に総勢15名、大人数のためプロジェクト紹介とメンバーの自己紹介でも数時間を要した。D.グレーバーの『負債論』をてがかりにしながら研究会を重ね、議論を重ねていくとのこと。
グレーバ―はIOU(=I owe you.わたしはあなたに○○を負う、つまりわたしはあなたに○○だけの借りがある)という借用証書に、貨幣でカウントされる負債の原点をみる。当方の持ち分は貨幣論や理論パーツである。しかし宗教や文化をも踏まえた「負債」はそれにとどまらない。今後どんな議論が展開されていくのか楽しみである。
そんな折、当方が駆け出しの研究者の卵だった時代からお世話になった某出版社の元編集Tさんの訃報に接した。あまりに急な知らせに愕然とする。当時のK社長も今は別の出版社に移られているが、どんな気持ちでいらっしゃることか。当方、K社長とTさんには、まさにIOUというしかない恩義をいただいている。故S先生がこの出版社につないでくださって、当方にとって初めての翻訳(まさかの共訳!)が可能になり、これが「本を出す」ことの原点になったのだ。Tさんに負ったものは返せないままに突然に断ち切られた。経済的意味に回収されきらない「負債」の意味が身に染みる。
と、しめやかに終わりたいところだが、そんなわけで最近はなんだか週末も休めず、先週は平日に数日ダウン。いまだに酷い夏風邪をひきずっている。ずず ず...。「先生いつもは学期中はもつのに珍しいですね」とゼミ生諸氏に指摘された(苦笑)。
「風邪は医者にかからないと一週間かかるが、医者にかかれば7日で治る」(ドイツの諺。本日のゼミで紹介したらけっこうウケた)。はい、つまらないことを書いてないで、早く寝るべきですねー。ちーん