目下、いくつもの台風が襲来中である。先週土曜日は野田市の「平和のつどい」に呼んでいただいて行ってきたが、朝から夕方までお天気が目まぐるしく変わり続けた。せっかく行くので、醤油の企業城下町の様子や、関宿城の名を残す博物館で、利根川・江戸川・利根運河に囲まれた街の治水と水辺の発展を学べたらなどとおもっていたのだが、とてもかなわず。
翌21日(昨日)は晴れ間。たまたま監督様からお知らせをいただき、三部作の一つ「ほかいびと」&トーク(俳人、金子兜太さんの特別映像という豪華おまけつき!)に足を運んだ。幕末から明治にかけて伊那谷を三十年あまり放浪した俳人、井上井月のドキュメンタリー&フィクションである。トークや特別映像も含めて、すばらしい企画であった。K監督、ありがとうございます!
「ほかいびと」をはじめ、まだあと何日か上映があるので、ここに宣伝させていただきますー。
ほかいびと(乞児)とは人の家先に立ち、寿言(ほがいごと)を唱えて物をもらうひとをいう。井上井月は二十代後半で、武士だったときのすべてを捨てて伊那谷にたどり着き、生涯この場所を放浪しながら俳句を詠んだ。土地の人々は井月を受け入れ、もてなした。ところが明治政府が戸籍や地租を整えるにつれ、人びとの意識が変質し、過去を語らず「誰かわからない」井月を次第に邪魔者とみるようになる。映画は美しい伊那谷の四季や土地の風俗に彩られているが、井月の生き様とこれを捉えた監督の眼差しが、幕末の戦争、明治という国家のあり方をまっすぐに見据えているのがすがすがしい。