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自称杉並区民になる

昨日2日晩は杉並公会堂で「原発はもうたくさんです!」(主催:「杉並区住民による脱原発宣言」集会実行委員会)が行われたので、自称杉並区民になって(?)参加してきた。なーに自宅から数歩のところはもう杉並区なのだから、まあいいではないか。参加者は大ホールをおよそ9割ぐらい埋め尽くした(主催者発表800人とか)。年齢層はやはり高めである。はじめに加藤登紀子さん登場のサプライズ、呼びかけ人代表挨拶に続いて鎌田慧さんの基調講演、休憩をはさんで雨宮処凛さんと松本哉さんの対談、その後にお母さんたち -杉並区で保育園を考える親の会をやっている竹下美穂さん、「八王子市民からの脱原発宣言」を先ごろ行った花崎晶さん、そして双葉郡富岡町から避難して水戸在住の木田節子さん― のリレートーク、最後に「脱原発杉並宣言」を採択して終了と実に盛りだくさんであった。
一番聴きごたえのあったのは、最後のおかあさんたちのリレートークであるが、時間がおしており準備してきたことを十分に話せなかったようだ。残念、何よりこれをもっと聞きたかった!思い出せば、震災後に岩波書店『世界』が体験談を集めた特集号があったが、津波や原発災害を経験した人々の話や言葉にはそれぞれ重みがあり、同じ号にのっていた各種専門家の話や言葉を凌ぐようなインパクトがあった。然るに一般の人々の声を拾うのはなかなか容易ではない。この日のイベントにしても、人は(当方だってそうだが)著名な名前を見てイベントに出かける。お母さんたちのお名前だけだったら(と言うか彼女たちのお名前や肩書はプログラムには出ていなかったが)ここまでの集客力はないのかもしれない。鎌田さんの基調講演で原子力ムラの何兆円とか何百億円とかの話を聞いた後で、お母さんたちの「一人百円づつ会費を出し合ってお菓子を買って、脱原発を考える会合をしてます」みたいな話を聞くと、そのコントラストに泣きたいような気分になる。話したいこと、聞き手の側からもぜひ話してほしいことのある人たちは各地でつつましくがんばっており、そしておそらくほとんど埋もれている。
とはいえ彼女たちも、こうした各種の催しに出るという戦略を意識して動き始めている。この日の会合の呼びかけ人も、「第5福竜丸事件の反対運動も杉並(の主婦たち!)から起こった」ことを考えたそうだ。ナルホド。なおこれは行政区としての杉並区の催しではなく、いわば行政や政党の政治とはとりあえず無関係に「たまたま杉並区を場として」展開しようとする「政治」である(だから自称杉並区民だってイイノダ!)。松本のいう「一揆」かどうかはともかく、可能性を感じさせる「政治」である。

思いがけない拾いもの(?)は呼びかけ人代表の熊谷博子さんの著書、休憩時間に物販で購入して帰り道に読み始めてみたら、これがたいへん面白い。「炭鉱と原発の問題の構造は酷似している。違うところは、炭鉱は文化を生み出したが原発は何も生み出さないことである。」まったくだ!著者の三池炭鉱への思いが伝わってきて、大切に愛撫しながら読みたくなるような本である。著者が水俣を撮った土本さんと一緒に仕事をした映像ドキュメンタリー作家であるというのもうなずける。

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わーい、サイン本だったー!

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2012年6月 3日 22:41に投稿されたエントリーのページです。

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