とある原稿依頼があって、昨今またゲーム理論関係の文献を読み直したり足したりしている。早いもので拙著を出してからそろそろ2年(在庫はまだ在る。うーん)、その後の研究の進展を見ようとして、あらっ 当時すでに出ていた文献の見落としを発見したりする、とほほな日々でもある。
さて、そんな文献の一つに、『もっとも美しい数学 ゲーム理論』(トム・ジーグフリード)があった。原文は A Beautiful Math でいかにも数学者ナッシュの有名な伝記、A Beautiful Mind(『ビューティフル・マインド』というタイトルで邦訳あり、映画化もされましたねー。ナッシュ役のラッセル・クロウよかったですねー)を意識したタイトルだが、邦題ではその影は見えなくなっており、いや内容もなかなか面白いものの一般向けにはちょっとテーマがコアすぎるだろう!と思ったのだが、なぜかすでに2008年に邦訳されてなんと文春文庫にまでなっている!
これを探すべく本屋に立ち寄って「文春文庫」の棚をうろついていると、なんとゲーム理論家たちの集ったランド研究所に関する必読文献、A.アベラの『ランド 世界を支配した研究所』も文春文庫になっているではないか! まじ? 数年前、院ゼミで原文か邦訳(単行本)を購入してもらって数千円もしたのに、今や886円。当時の院生諸氏よ、済まない... (でも文庫になったのは2011年の6月だから仕方ないか)。いや、そういう問題じゃなくて、安く手に入るようになったことはよいのだが、ゲーム理論に関する二次文献がなぜこんなに邦訳されているのだろう?いったい誰が読むんだろう... 文庫になったってことは、それなりに読者がみこめるんだろうか...
しかしもっとたまげたのは、ナッシュの数学的論文やノーベル経済学賞受賞スピーチなんかをあつめた専門書 The Essential John Nashという本の邦訳が出ていることであった。『ナッシュは何を見たか』というキャッチ―な邦題がついているが、中身の半分以上はがっつり数学である。いや、たしかにいい本ではあるのだが、しかしホントにこれ誰が読むんだろう... ぢゃ拙著も買ってよーん、なんてね(そっと言う)。