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「弁当作ってもらった」(言語学小エッセイ)

この前、大学で弁当を食べていたときに、

「作ったの?」と聞かれたので、
「作ってもらった」と答えました。

日本語だと、項(argument)を名詞句で
埋めなくても、そのまま受け入れられちゃう。

この場合、「既知」で「定」の名詞句が
思い浮かばなくても全然構わない。

一方、二番目の例文を英語にするときに、

I had X make it.

のXは、him、her、<名前>など
明示的な項が無いとこの文型は使えない。

このXを非明示にする場合には、
被使役節を受身にして、

I had it made.

にしないと行けない。

(被使役節の動作主は、by句で
 任意的に表現することができる。)

松本克己先生等の提唱する、
北西ヨーロッパ言語連合では、
「主語の明示」というのが特徴の1つに
なっているし、

河野六郎先生の「両肢文」というのも、
やはり、主語の明示の義務を言っているけれど、

北西ヨーロッパ言語連合の構成言語では、
主語だけでなく、もう1つ位の非主語項も
明示の義務があるのではないかと思っている。

以前、共通言語の無かった、英・日カップルと
親交があって、彼らの間では、「英単語」を
非英文法で組み立てた二人だけの混成言語が
使われているのは楽しく観察していました。

A: You like?(訳:「好き?」)
B: Yeah, I like.(訳:「うん、好き。」)

なんていうやり取りが出て来て、
英語のノンネイティブながら
違和感を感じていました。

「英語」では、

Do you like it?

と主語と目的語を両方言わないと
やっぱり、likeを主動詞とした節は完成しない。

(映画で、

 A: I love you.
 B: Yeah, I know.

 で、knowがitを要求しないのは、
 何か別な理由で説明しなければいけないのでしょう。)

そう考えると、英語で、

I ate an apple.

は他動詞文だけど、

I ate.

は、逆使役文の自動詞文で、
「私は食事をした」という意味です。

食べたものが「既知」で「定」だったら、

I ate it.

と言わなければならない。

なんていうこと「も」、今考えています。

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2014年1月20日 10:24に投稿されたエントリーのページです。

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