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ことばのよしなしごと

「新造の動詞について」

杉田洋他『新世代の言語学』で、
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新たに名詞の短縮形等から作られる
動詞についてのコラムがあり、
例えば、告白するから作られる
「コクる」が挙げられている。

その場合、語尾「る」の前の母音がa、o、uで
あれば、必ず五段活用になり、
i、eであれば、(上/下)一段活用にも
五段活用にもなる可能性があると述べている。

「コクる」は、「る」の前の母音がuなので、
当然、五段活用(コクらない、コクります)になる。

しかし、近年の「新しい」動詞を観察したとき、
上に述べられているようには、上一段活用の動詞、
下一段活用の動詞は生まれないのではないかという
「感」が私にはある。

すでに定着した動詞には、例えば、「かびる」という
上一段動詞がある。
(歴史的に名詞「かび」から動詞「かびる」が派生したのか、
 動詞「かびる」の連用形から名詞「かび」が派生したのかは
 ここでは問わない。)

例えば、「コピーをする」という意味の「コピる」。
上掲書の言う可能性的には、上一段動詞(コピない、
コピます)となっても、五段動詞(コピらない、
コピります)となってもいいはずである。
しかしながら、この動詞は、実際のところ五段活用する。

「ツイッターで呟く」という意味の動詞は、
終止・連体形「*ツイる」で使われているのは
見たことが無いが、「テ形」の「ツイって」、
過去形の「ツイった」は、明らかに
この動詞が五段活用していることを示している。
(もちろん、もとの名詞「ツイッター」の語形から
 上一段活用の「ツイた」より、
 五段活用の「ツイった」が好まれるということの
 影響もあるだろう。)

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「接置詞に関する色々」

接置詞(あるいは側置詞)とは、
前置詞と後置詞を抽象化して総称した呼び名である。

日本語に、もしソレがあるとすれば、名詞の後に来る
後置詞のはずである。

しかしながら、日本語のナニが後置詞であるかには、
見解にばらつきがある。

理論言語学では、名詞句プラス助詞を後置詞句(PP)と
扱っているものが見受けられる。

しかし、助詞の無い名詞句(NP)と、助詞を伴う
ここでの後置詞句(PP)を違うものとして区別することが、
日本語文法の記述において、妥当なものではないような
感が私にはある。

一方、角田太作氏は、『世界の言語と日本語』の中で、
http://amzn.to/cS5vC0 (私はまだこの改訂版を見ておらず、
恥ずかしながら1991年版しか見たことが無い。)
「?の中に」、「?の上に」のようなものを後置詞として
扱っている。

私もこちらの方が後置詞らしいと考えるのであるが、
しかし、こちらは名詞の下位区分とも考えられる。

接置詞が名詞が主に付加語句的に(副詞的に)働くときに
そのマーカーとして使われ、文法化が完了している、
あるいは共時的には文法化の過程を見ることができない
言語もあるが、言語によっては、アサバスカ語のように
後置詞が名詞と未分化である言語もあり、
(グイチン・アサバスカ語 k'yuu「足跡/?のやり方で」)、
一方、前置詞が動詞と同形であるタイ語のような
言語もある(haj「与える/?(のため)に」)。

こう見て行くと、文法化が完了した、あるいは、
文法化の過程を既に見ることができない言語を
プロトタイプとして扱ってしまうことには、
多少抵抗が残る。

また、理論文法の雄C氏が、過去に「マイナス名詞性」、
「マイナス動詞性」を接置詞の特徴としたことも、
言語的な偏りがあるように思えるのである。

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2010年6月11日 22:35に投稿されたエントリーのページです。

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