相談通訳の倫理綱領を策定しました

相談通訳の倫理綱領

東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター
コミュニティ通訳協働実践型研究会

前文
 私たち相談通訳は、あらゆる専門家相談および外国語相談窓口の現場において、言語・文化的マイノリティが抱える諸問題の内実を読み取り、言語間の訳出行為にとどまらず、他の専門家と協働して課題の解決を目指す。
「相談通訳の倫理綱領」は、通訳実務を担う専門人材が自らの実践において順守し、振り返るための行動指針である。またこの倫理綱領は、多文化共生を目指す一専門職としての相談通訳の自覚を広く社会に示し、その業務上の責任範囲を明らかにするものである。


1 相談通訳の定義
 相談通訳は、コミュニティ通訳の専門分野である司法・行政・教育・医療の分野において、言語・文化的マイノリティを通訳・翻訳面から支援し、ホスト社会につなげる「橋渡し役」を務める専門職である。


2 倫理基準
 相談通訳として業務を遂行するにあたり、以下の「知識」「技術」「態度/マナー」に分類される倫理基準を順守する。

 2-1 知識
 ・相談通訳は、日本の制度面を中心とした司法・行政・教育・医療の各分野に関する基礎知識を習得する。

 ・相談通訳は、日本社会の多言語・多文化化をめぐる動向を把握し、相談者の背景に関する理解を深める。

 2-2 技術
 ・相談通訳は、情報を正確に「聞く」力、共感的に「聴く」力、質問により問題を把握するための「訊く」力からなる「きく」力を基本的技術として、的確なヒアリングを行う。

 ・相談通訳は、正確かつ忠実な通訳を提供するため、逐次通訳を原則とする。

 ・相談通訳は、専門家の発話が相談者に十分に理解できないと通訳者の立場から判断されるとき、専門家に状況を説明する。

 ・相談通訳は、相談者の発話が言語・文化的相違により誤解を生ずるおそれがあると判断されるとき、それを専門家に適切に伝え、コミュニケーションを円滑にする。

 2-3 態度/マナー
 ・相談通訳は、業務上知り得た情報について守秘義務を順守し、自らの個人情報についても厳重に管理する。
 
 ・相談通訳は、対象となる人たちとの信頼関係を形成するため、自ら適切な服装・表情・振る舞いを心掛け、また対象者間の立場の違いに配慮しながら、対等なコミュニケーションを成立させる。

 ・相談通訳は、社会からの理解と信頼を得るために、自己の力量を自覚して業務にあたる。

 ・相談通訳は、自らの実践を振り返り、協働による省察の場を通じて、常に専門性の向上に努める。


以上

日時: 2015年07月01日