「『異文化共生』支えたい」《東京新聞》

「外国人無料相談会」「雇用や労働、心の問題も増加」   

 三十六万人余りの外国人が暮らし国際結婚が九組に一組に上る東京都。生活のあらゆる局面で不安や問題に突き当たる外国人たちに、法律や労務、医療など各分野の専門家がアドバイスする無料相談会は五年目を迎える。運営するNPOなどは「外国人の住民がこれほど増えているのに、行政の意識は低い。外国人と共生する社会を支えられればと話す【小嶋麻友美】
 七月三十日、品川区で開かれた本年度四回目の相談会には、中国やフィリピン、ミャンマーなど出身の約三十人が訪れた。ビザや離婚問題のほか、長く日本に暮らす相談者からは年金や昇進差別の相談も。弁護士や行政書士、精神科医らが十一言語の通訳ボランティアとともに、法制度や解決策の説明に追われた。
相談会は、外国人支援に取り組む都内約四十団体でつくる「東京外国人支援ネットワーク」(杉沢経子代表)が、地元自治体や国際交流協会などとともに開いている。今回は企業経営者や行政書士ら多数分野の専門家を会員に持つ特定非営利活動法人(NPO法人)「国際活動市民中心(CINGA)」=電03(3316)5039=が共催し、スタッフをそろえた。
昨年度は述べ三百八十人余が来訪。内容は雇用・労働やビザの問題に加え、ドメスティックバイオレンス(DV)や心の問題も増えているという。杉沢代表は「日本人にとってもストレスの多い社会で、外国人には『異文化ストレス』が重なる」と指摘する。
 多文化社会をにらんだ教育や研究、社会貢献を目的に東京外国語大学が本年度設立した「多言語・多文化教育研究センター」も今回、初参加。中国語やポルトガル語などを専攻する四人の教員が通訳ボランティアを務めるなど、協力体制は広がっている。本年度は全十七回開催予定だが、「相談しやすいようニ週間に一回のペースで開催できれば」と杉沢代表は話す。
 一方、CINGAは留学生の就職支援にも力を入れている。国内で学ぶ留学生は約十三万人。「半数近くは日本で就職する意欲があるが、現実は一割に満たない」と黒沢玉夫代表理事。企業側は就職後の受け入れ態勢や教育を不安視し、しり込みしがちという。
 留学生と企業を結びつける就職相談会のほか、今後は企業内の研修や教育プログラム提供も行う予定。黒沢代表理事は「せっかく学んでも就職できなければ、日本への留学生は減り、優秀な頭脳も集まらなくなる。企業や地域の受け入れ態勢を調えなければ」と訴える。
次回相談会は九月九日午後一時-午後四時、千代田区有楽町の東京国際フォーラムで。

日時: 2006年08月08日