「ノウハウ学び日本語指導」《中日新聞》

「大学生が教育支援」  「背景に教員不足」

 外国人児童の日本語指導に四苦八苦する先生たちを支援しようと、愛知教育大(愛知刈谷市)は、専門知識を身につけた学生たちを小中学校に派遣。日本語教育の手法がととのっていない教育現場で、頼りにされている。教材を開発したり、教師からの相談窓口も設けるなど、意欲的な取り組みだ。【酒井ゆり】

「大学生が学習支援」
 愛知県刈谷市の住吉小学校。朝礼が終わると、ブラジルや中国出身の児童五人が、筆記用具を持って日本語支援授業の教室に集まってきた。毎週月曜日は、愛知教育大の坊薗絵里子さん(20)ら学生三人が担当している。
 四月にブラジルから来日したばかりのタミちゃん(ニ年)。「びでお」「れもん」と、ひらがなを読み上げながら、カタカナに書き換えていく。「はい、よくできたね」と学生がほめると、うなずきながらニッコリほほ笑んだ。
 坊薗さんは、昨年六月から支援活動に参加。「全然話せなかった子が、どんどんうまくなっていくのがうれしい」と、やりがいを感じている。

 日本語をほとんど知らない状態で小中学校に入ってくる外国人の子どもたちは増える一方だ。
 愛知県の場合、児童十人以上で一人、同三十一人以上で二人、同五十一人以上で三人を「日本語教育適応学級担当教員」として各学校に加配している。ただ、指導の中身はまだ手探りの段階で、指導方法は学校によってばらつきがある。
 日本語の土台ができていない児童だと、たとえば五年生に一年生の教材を使っても理解は進みにくい。
 愛知県教育大の岡田安代教授(日本語教育)は「まず音声を学んでから、文字の習得に入るのが基本だが、いきなり漢字の書き取りから始める先生も多い。それだと外国人児童は意味が分からずただ書き写すだけになりがち」と指摘する。
 住吉小は外国人児童が十人に満たず、加配の対象外。指導の人手が足りず、教頭や教務の先生らが交代で、日本語指導の授業を受け持っていた時期もあった。それだけに岡田教授から指導のノウハウを学んでいる学生たちの援軍は「とてもありがたい」という。

 愛知教育大が学生派遣を始めたのは十年ほど前から。外国人児童が増え、対応に困った学校からの要請があったからだ。
 派遣先は年々増え、本年度は周辺の市町の小中学校三十校になった。簡単な日本語で書かれた算数の教材も開発した。学内には専門書籍などもそろえた「外国語児童生徒支援リソースルーム」=電話0566・26・2219=も設置し、スタッフが指導の相談も受け付けている。
 こうした外国人児童の学習支援は、東京外国語大(東京都府中市)も積極的に取り組んでいる。04年には「多文化コミュニティ教育支援室」を設置し、学習支援に参加する学生たちのために事前研修プログラムも用意した。同室の運営委員長でもある武田千香・同大助教授は「今後、日本語指導のニーズはますます高まってくる。プロとして活躍できる人材育成が不可欠」と強調した。

メモ
 文科省の2005年度の調べによると、日本語指導が必要な外国人児童生徒の在籍学校数は全体で5281校。在籍数「1人」が2485校と約半数を占め、「五人未満」になると8割を超える。
一方で「30人以上」も77校と前年度より37.5%増加し、分散と集中が二極化している。

日時: 2006年07月05日