中文翻譯 故宮「國立」兩個字問題與日台關係

 故宮「国立」の二文字と日台関係

小笠原 欣幸


 6月24日から東京国立博物館で開幕する特別展「台北 國立故宮博物院」が「国立」の二文字で大もめになり,総統夫人の訪日が中止になりました。昨年,故宮側と東博側との間で,展示文物に関する文書に「國立故宮博物院」と明記すると合意し,東京博物館のポスター,広告,チケットなどには「国立」が入った故宮の正式名称が使用されましたが,特別展の協賛団体(日本の新聞社,テレビ局7社)の作成したポスターなどの広告物には「国立」を使わず「台北 故宮博物院」と記載していることを,直前になって台湾側が問題視し修正を要求,受け入れられなければ「国家の尊厳が守られない」として,特別展への出品をやめると強硬な態度をとりました。日本側は問題となったポスターの張り替えや撤去を進め,台湾側もぎりぎりになってOKを出し特別展は予定通り開催されることになりました。
 台湾メディアの報道を見ていると,日本と台湾との間には国交がないこと,そして日本が承認しているのは中華人民共和国であるということを忘れているのではないかと思えてしまいます。1972年の日中共同声明によって,日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であること」を承認しました。そのため,日本政府の公的文書,主要メディアの報道などで台湾の国家性を示す「中華民国」「国立」などの用語は使えなくなりました。
 しかし,その後40年の年月をかけて,経済活動を含む日台の民間レベルの交流は拡大し,しだいに,台湾に中華民国という名の国家が存在している現実を正視しようという機運が広がり,日中共同声明に違反しない形で,台湾の実態に則した文章表現が使用されるようになりました。これは,外交的に孤立している台湾が自らの努力によってその存在価値を高めてきた表れです。そのような台湾の人々の努力に,私はいつも最大級の敬意を抱いています。
 今回,東京国立博物館が台湾の故宮博物院との間で「国立」の二文字を入れた呼称を使用することに合意したのは,台湾にとって大きな突破,日本側からすると台湾への大きな善意の表明ということになります。
 一方,今回の協賛団体である日本の大手メディアは,各社とも中国に支局を出す時に中国政府から日中共同声明の遵守を約束させられています。日本メディアにとっては,中国側に弱みを握られながらも,過去40年間,台湾報道を徐々に拡充し,台湾の現実が日本の読者に伝わるように用語の点でも努力してきたと評価することができます。
 今回の故宮と東博との合意に協賛団体が入らなかったのは,中国からの抗議やいやがらせを防ぐため,あいまいな余地を残すためであったと推察されます。このあいまいな余地を,台湾側は日本の二枚舌と厳しく非難していますが,あいまいさを消してしまえば損するのは台湾です。なぜなら,この問題を突き詰めていけば,日本の外交的立場の論理では,「国立」の国とは中華人民共和国となってしまい,日中共同声明の厳格な適用という40年前の状態に戻ってしまうからです。
 「国立」の二文字にこだわる台湾の気持ちはよく理解していますが,この問題は,積み木を重ねるように一歩一歩慎重に進める必要があります。「国立」で強硬な姿勢をとるやり方は,これまで日本において台湾のために動いてきた人々の努力に水を差すことになります。また,台湾との交流活動を検討していた地方自治体,各種法人など公的機構が今回の名称をめぐるトラブルを見て消極的になるという副作用が心配されます。今回の「国立」騒動は,台湾にとって自分で自分の首を絞める結果になると思われます。大変残念です。

2014年6月23日


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