« 2024年3月 | メイン

2024年5月 アーカイブ

2024年5月19日

マイクロアグレッションに関する講演

先週、江戸川区の対面およびZoom Webinarのハイブリッドの講演会で、下地ローレンス吉孝さんの講演を拝聴しました。

この江戸川区の情報誌ColorfulのNo. 8と重なるところが多いお話でしたが、

https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e090/kurashi/jinken/sankaku/colorful.html

主に少数派の集団に対する、ステレオタイプ的な(紋切り型の)決めつけ(アンコンシャス・バイアス)と、そこから派生する言動によるマイクロアグレッション(日常での攻撃)に関する話でした。

多数派から、「そんなに、言っちゃいけないこと、聞いちゃいけないことを羅列されると、何も言えなくなる!」という不満が出がちな事柄ではあるのですが。

(実際にフロアからのそのラインのコメントもありました。)

問題を感知した後の多数派の選択肢は、
1)マイクロアグレッションなど気にせず、従前の言動を続けていく
2)属性の異なる少数派ともっと深く知り合うために擦り合わせをしていく

だと思うのです。

日本の政治における与党は(1)で留まっていて、変える気も微塵も無いですが、ある部分の革新的な市井の人々の中には、(2)に移行してきている人も結構見られます。

マイクロアグレッションは、カテキズムやマニュアル的に、「◯◯はセーフ」「◯◯はアウト」を羅列すれば解決するものではなくて、それこそ、多数派と少数派が対峙した際に、その都度どれだけ歩み寄れるかを、お互いに探り続けることだと思うのです。(お互いにとは言っても、変えることが多く必要なのは多数派の方です。)エルゴン的なルールの束ではなくて、お互いの関係性の中から着地点(それも、それで固定されるものではなく、日々更新が必要)を探り続けなければならないエネルゲイア的なものだと思うのです。

フロアからの質問で、「ある少数言語集団では、家族構成や、結婚の有無、子供の有無などを聞くのがディフォールトで、それを問題じゃないですか?と尋ねたところ、言語多数派の文化を押し付けないでほしい。それが我々の文化だ」と言われたとか。

そのご質問者も敢えて集団名を仰ってなかったので、私も書きませんが、「あの人たちだな」とは思います。

確かに、最初の質問が、そういう家族関係のことが多いですよね。あと、どの学校の出身かも聞かれます。

細かいところに首を突っ込みすぎなキライはありますが、でも却って、様々な多重マイノリティーの人々が、その大コミュニティーの中で、その多重マイノリティー性を隠さずに、コミュニティーを引っ張る牽引役として活躍なさっている人が多い感じがします。(隠されている方もいるとは思いますが。)

その少数派でも、主流の場所で活躍できるというのが、この国の言語多数派コミュニティー(日本語東京共通語コミュニティー)とは違うと思います。

私も、普段は、少数派然として、マイクロアグレッションにビクビクしていることが多いですが、他の属性に関しては、実は気が付かないうちに、他の少数派集団にステレオタイプを作って、マイクロアグレッションをかましていることもあるのだと思われます。それに気がついたら、次は、その人たちとどういう関係を再構築するかを考える姿勢が大事なのだと思われます。

About 2024年5月

2024年5月にブログ「タナナことば研究室」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2024年3月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。