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2015年4月 アーカイブ

2015年4月 1日

『総合文化研究』 第18号


東京外国語大学総合文化研究所による雑誌 『総合文化研究』 第18号が刊行された。
「知覚の変容と文化表象」として特集が組まれ、私も論文「衣服の二重性―またはラーマノワの挑戦」を寄稿した。

なお、表紙に用いられた絵画は、松浦寿夫先生の大作 『午後の韻律法』(2014年)。
淡い色のコンポジションがちょっとアンニュイでうららかな春の午後を思わせる。

最近、総合文化研究所は活動がずいぶん活発になっている。
講演会やシンポジウム等さまざまなイベントを開催している他、博士後期課程の院生による定期的な研究会を立ち上げた。
山口裕之先生が代表を務める科研(通称「アヴァンギャルド科研」)もワークショップを始めている。

雑誌『総合文化研究』の論文、イベント報告、書評を読んでいると、専門分野の「壁」を取り払って自由に横断する気力と視点が得られる気がする。
とりわけヨーロッパ中心になりがちな文化研究ではなく、本学が強みとするアジア文化圏研究との交流・交錯をより深化させて「超領域的・横断的文化文学研究」をもっと活性化していけたらと思う。

2015年4月 4日

チベット文学が面白い! 『ハバ犬を育てる話』


東京外国語大学出版会のシリーズ 「物語の島 アジア」 第3弾はチベット現代文学だ。
タク・ブンジャ 『ハバ犬を育てる話』 海老原志穂・大川謙作・星泉・三浦順子訳(東京外国語大学出版会、2015)。

鋭い風刺、ユーモア、ほのかな叙情、とぼけた語り口... 完成度の高い短篇集だと思う。
可笑しいのは表題作の「ハバ犬を育てる話」。
ハバというのは小型の愛玩犬のことだが、このハバが、地位の高い人の靴を舐めてピカピカにしては取り入って出世する。媚びたり理屈をこねたり(そう、犬なのに人の言葉を話すのだ)、もうじつにしたたかで傲慢なのである。ハバが主人を乗り換えて語り手「私」の飼い犬になると、

「さらには私の洋服の汚れを舌で舐めてきれいにしたり、同僚の目の前で私の肩によじのぼって彼らを見下してみたりして、自分の存在を誇示してみせた」
「とにかく私の腰ぎんちゃくになってからというもの、ハバは他人に大言壮語を吐くようになり、それにともなって思い上がりも強くなっていった」(pp.22-23)

私たちのまわりにもいる自己顕示欲の強い権威主義的タイプである。タク・ブンジャのアイロニカルな筆致が痛快。

でも、私がいちばん気にいったのは、「一日のまぼろし」という叙情的な小品だ。夜が明ける頃起き出した幼いヤンブムが、日の暮れる頃には孫のいる老人になっている。人の一生が一日に凝縮され、途切れなく語られている。随所に羊の鳴き声「メェー」が挿入されているのは、羊が鳴くと時間が早回しのように過ぎるということだろうか。最初はそれにも気づかないうちにヤンブムが大きくなっていく。
その「仕掛け」が見事であった。

2015年4月18日

コンツェルト新歓公演


4月21日(火)19:20 より102教室で、ロシア語劇団「コンツェルト」による新歓公演がある。4回ある新歓公演の最後だ。
チェーホフ原作の『結婚申込み』
お見逃しなく!

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