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「実験」映画 『アンナ・カレーニナ』

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先日、ジョー・ライト監督の映画 『アンナ・カレーニナ』を観てきた。
原作は言わずと知れたレフ・トルストイ。主演はキーラ・ナイトレイ(上の写真)。

ペテルブルグの社交界を「芝居」に見立て非リアリズム的手法を採り入れた実験的な作品である。
玩具の汽車を走らせそれをアンナの乗る汽車にすり替えるという冒頭近くのシーンから観客に軽い違和感を持たせ、場面を転換するところでは、舞台の天井裏を観客に見せつけるかのように俳優たちを移動させる。官僚主義的な仕事は単調で様式化されたある意味ではリズミカルな動きであらわされているし、オペラ劇場がそのまま競馬場と化してしまう。
観客は、アンナの悲劇を見ている社交界の目撃者を、さらにその背後から見るという二重性をつねに意識させられる。
ただしリョ―ヴィンの場面はそうした閉鎖的な様式化された演劇空間ではなく、戸外の広々とした(社交界的観客のいない)自由な空間になっていてコントラストが明白だ。だから最後に、カレーニンがアンナの残した子供ふたりと花の咲き乱れる戸外にいるというのは、彼がリョ―ヴィンのように「解放」されたことを示していると思われる。

映画という媒体をどこまで様式化できるか、その限界に挑んだような作品だった。
脚本のトム・ストッパードのアイディアなのだろうか?

ちなみに、ストッパードは2009年に日本でも上演された壮大な芝居 『ユートピアの岸へ』 の原作者である(日本公演は蜷川幸雄演出)。これは、ゲルツェン、バクーニン、ベリンスキー、オガリョフといった19世紀ロシアの輩出した優れた思想家たちの生き様を描いた9時間に及ぶ驚異的な芝居だった(最初から最後までまったく退屈することなく感動をもって観たことを覚えている)。

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2013年6月 1日 23:52に投稿されたエントリーのページです。

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