3月3日、東京外国語大学の誇るロシア語学の泰斗 中澤英彦先生が研究講義棟115教室で最終講義をしてくださった。題して「時を紡ぐ――竹の顰(ひそみ)に倣って」。
教室は、同僚や教え子や学生で満員だった。
私も不肖の弟子。もちろん「弟子」というのは自称だが、東京外国語大学で若かりし助手の中澤先生がロシア語を教え始められたちょうどその年に大学1年生になり、先生にロシア語の手ほどきを受けた。
講義は、長年研究してこられたロシア語動詞のアスペクトについて。
始まりも終わりもない時間の流れに「竹の節」のような「区切り」をつけることをイメージすれば、完了体を感覚として捉えるのに有効なのではないかとされ、ご退官を「区切り」であることと重ねられた非常にウィットに富むお話であった。ご自身の仕事を「未完の完了体」であると締めくくられたが、まさに「他のものに寄りかかって生えることをしない竹」と先生の学問の姿勢には相通ずるものが感じられる。そう、先生は竹であられたのだ。
いつまでたっても完了体と不完了体の区別に悩まされている私にとって、今日のお話は啓示のようでもあった。
中澤先生、40年近くにわたって教鞭を取られ、本学の(そして日本の)ロシア語教育に多大な貢献をしていただき、本当にありがとうございました!