これは、ペテルブルグの画家Анна Остроумова-Лебедева アンナ・オストロウーモワ=レーベジェワ(1871-1955)が1910年に制作した木版画 「クリューコフ運河」。
彼女は『自伝的回想』で、20世紀初頭ペテルブルグの画家たちが日本の浮世絵に夢中になっていたことに触れ、彼女自身も強い関心を持っていたことを次のように書き残している。
「1900年から1903年にかけて、ペテルブルグに日本人たちが現われ、昔の日本の巨匠たちの浮世絵を売りだした。それから、マンガ(訳注:「北斎漫画」のこと)、木や象牙で作る小さな彫像ネツケも売るようになった。もちろん、これらの中で私がいちばん注目したのは浮世絵だ。浮世絵に見られる日本芸術の特徴が魅力的だと思った。現実的なものと幻想的なもの、約束事と実際のものが結びつけられ、動きの瞬間がとてつもなく軽やかに伝えられているからである」
А.П.Остроумова-Лебедева. Автобиографические записки. Ⅰ-Ⅱ тт. М.: ЗАО Центрполиграф. 2003. С.262.
つまり、この時代のロシアに「ジャポニスム」とも呼ぶべき現象が見られたということだ。ほぼ100年後の現在ふたたびロシアでは日本文化が愛されている。マンガ(マンガ違い!)、アニメ、村上春樹、日本料理。ちょっとこそばゆい感じがするけれど。