中国俗文学研究会 公式Webサイト

会の沿革

1973年から東京外国語大学中国語学科金丸邦三教授(当時)のゼミ履修者有志が集い、近世文学作品を読む会が始まる。当初は『水滸伝』の講読からスタートしたが、間もなく元雑劇を主要な研究対象とし、年二度春夏の合宿では元曲会読が定着した。以来十年を経て会読記録公刊の機運が高まり、1983年春研究会最初の刊行物『日中ことわざ対照集』上梓を機に正式に「中国俗文学研究会」として発足。同年7月会誌「中国俗文学研究」創刊。以来中国語の「言葉」の研究、特に近世語及び近世文学を主要な研究対象とし、広く若手研究者に門戸を開いて研究成果の発表の場を提供する。

活動内容

主として会誌に掲載する雑劇及び小説の解読と注釈作成作業を中心に毎月一回の例会を開催。また、会員以外の研究者や学生の自由参加を募り、毎年一回の夏合宿(二泊三日)を実施する。

研究会会誌 「中国俗文学研究」

1973年より東京外国語大学中国語学科金丸邦三教授を中心に開催されてきた白話文学の講読会が母体となり、1983年「中国俗文学研究会」が発足。同年7月、同研究会の会報誌として第一号創刊。書名は鄭振鐸著『中国俗文学史』に因む。第二号以降ほぼ一年一号ずつ発行し、2013年現在、第二十二号に至る。

中国近世の白話文学作品を主要な材料として、近世語・近世文学に関する研究成果を収録する。創刊以来、毎号一篇ずつ元雑劇の注釈(会読記録)を載せるほか、白話短編小説の語釈、会員をはじめとする内外の研究者による論文、海外における学会の研究事情の報告等を掲載する。

最新号(第二十二号) の収録内容

(1)望江亭劇注釈:研究会会読
 「望江亭」は元雑劇作家中最も多くの作品を伝える關漢卿の一作であり、今日では『元曲選』本の他『脈望館雜劇選』本、『古雜劇』本にテキストが残存している。本編は同劇中の白話語彙に注釈を施し、同時に劇中の歌曲の日本語訳を試みたものである。
(2)『楊家将演義』再考 ―《北宋志伝》と《楊家府伝》をその対象として―:平原真紀
 明代に刊行された《楊家将演義》小説は、《北宋志伝》と《楊家府伝》に大別される。本稿はこの二つの異なる系統の《楊家将演義》小説について、物語構成・人物設定・字句の異同などにわたり詳細に比較考察を行った。尚、本稿は筆者修士論文の抜粋・再構成原稿である。
(3)「三言」「二拍」における僧尼と道士:笠見弥生
 明末天啓年間以降、馮夢龍・陵濛初によって刊行された二部の白話短編小説集二百篇は「三言二拍」と並び称され、しばしば恰も一系列の作品の如く扱われるがそれぞれ異なる特徴が少なからずある。本論では僧侶と道士の描き方に焦点をあて、特に「二拍」に見られる思想の特徴を検討した。
(4)閩南口承文芸「講古」とその登場人物たち ― 蔡六舎と露鰻舎― :三浦久仁子
 福建省南部の泉州・厦門・漳州の三市は閩南語文化圏を形成する主要都市で、普通話の浸透により失われつつある方言文化を今尚よく保存している。本稿は口承文芸として同地方に伝わる「講古」の現状を分析し、その特徴を『福建故事』収録の「露鰻舎」と泉州の「蔡六舎」を例にとって詳細に解説を加えたものである。
(5)厦門の地方劇模様 ―歌仔戯を中心に― :川島郁夫
 福建省南部の中心都市厦門市は台湾に生まれた閩南語による地方劇「歌仔戯」の公演が日常的に行われている。本稿は「歌仔戯」の発生と上演の歴史を辿りつつ、筆者が2009年半年間現地調査を行って収集した資料に基づき、現在市内に残される地方劇上演用の野外舞台の使用状況を、画像を含めて報告するものである。

詳細

刊行日2013年4月1日
ISSN0914-3742

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■最新情報 中国俗文研究会単刊二種

(1)注訳 竇娥冤 金丸邦三編
 「竇娥冤」は元雑劇最大の作家である關漢卿の作品の中でも最高傑作に数えられる名品で、中国演劇屈指の悲劇である。幼くして母を亡くし、二十歳前に夫と死別した不幸な女が、身に覚えのない殺人事件に連座して処刑され、死後亡霊となって無実の証を立てるという筋立ては、当時の裁判の不合理を痛罵した、感動的な物語である。単刊本「竇娥冤」は、当研究会の創立者である編者が、長年の研究成果を注訳という形で結実させたものであり、我が国における近世白話研究の記念すべき道標であると自負する。
(2)注訳 錯斬崔寧 金丸邦三編
 「錯斬崔寧」は宋代の語り物文芸「説話」の形式を今日に伝える短編小説…話本を集めたとされる『京本通俗小説』中に一篇である。同作品は明末短編小説集「三言」にも収められ、明以降の戯曲作品にも翻案され、民間ではとりわけ有名な物語となった。二人の若い男女が無辜の罪で裁判にかけられて処刑された後、真犯人が捕えられて冤罪が晴らされるという展開は上記「竇娥冤」と共通する筋立てであり、当時の裁判の理不尽を痛烈に批判した傑作とみなされる。単刊1同様、編者の長年の研究成果の集大成であり、近世語研究には必読の書であると考える。
刊行日2013年7月25日

お問い合わせ

中国俗文学研究会

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E-mail : kawaikuo@tufs.ac.jp

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