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最終成果
ヨーロッパ言語班:
川口は、当初計画にもあるように、2012年から継続的にフランス語話し言葉の現地収録を行った。構築されたフランス語話し言葉コーパスに基づき、中高母音および鼻母音の習得過程の調査、口蓋化現象、否定辞等に関する分析を行い、学会発表および論文執筆を行った。また、フランス人ネイティヴと日本人学習者のイントネーションを比較し、文末の下降イントネーションについて、教育的観点を含めた研究会報告を行った。2014年11月に他機関と共催で、コーパス言語学とフランス語話し言葉コーパスに関するワークショップを実施し、2015年9月にはパリ第10大学に招聘教授として招かれ、コーパス分析と統計的手法を用いた言語研究の利点・課題に関する講義と報告を行い、同時にオルレアン大学でフランス最大のコーパスであるESLOの責任者と会い、今後の協力関係等についても話す機会を得た。
高垣は、スペイン、マドリード自治大学にて2016年3月にコンピュータ言語学アントニオ・モレノ・サンドバル准教授と氏が作成する多言語コーパスの中に位置づけられる日本語コーパスの技術的問題について面談し、情報交換した。また、バルセロナ自治大学にて言語学のAngel Gallego氏とスペイン語のコーパスによる方言研究法について情報交換した。今後両者とも共同研究を推進する予定である。
斎藤は、前年度までに収集し整理した日本人英語学習者の音声データの分析を続けた。日本人英語学習者のイントネーションについて、同一人物の留学前と後の発音および音声学の授業履修前と後の発音を比較することにより、英語のプロソディーがどのような学習過程を経て身につくのか、また、どのような特徴が学習レベルを評価する指標となりうるのかを探った。
吉冨は、既存の英語学習者のナラティブ・コーパスを拡充し、流暢さ・自然さに影響する要因の内、語彙選択・定型表現(とりわけ様態動詞を含む句動詞)の使用の観点から帰国子女と非帰国子女を比較する言語分析を行った。これにより当初計画にあるとおり、学習者言語における言語使用の正確さのみならず、流暢さ・自然さ・語用論的な適切さに貢献する言語特性について実証的研究を進めた。

アジア言語班:
上田は、当初計画にもあるように、2012年から継続的にクメール語コーパスの拡充のため、著作権に問題のない言語資料を探し、書記言語に加え口語資料の収集をした。また、キーワード設定による例文検索収集を行い精度を調べた。収集した資料の一部を利用し、クメール語の形容詞文及び文末詞について研究成果を発表した。収集したデータは今後も論文や教材に利用する予定である。
鈴木は、当初計画にもあるように、2012年から継続的にラオス国立大学文学部と協力して、ラオ語の書記資料のコーパスデータ化の拡充に努めた。同時に蓄積されたコーパスを利用してラオ語における機能語や統語構造(繋辞・動詞句構造など)の記述研究を行い、学会発表、および論文を執筆した。また、タイのチュラロンコン大学でタイ語コーパスの現状やタイ語およびラオ語のコーパス利用に関する問題点について協議した。2014年9月には、人文社会科学分野における学術研究セミナーをラオス・タイの言語学者と共同開催し(ラオス)、コーパスを利用した言語研究に関する諸問題について講演し、討議した。
海野は2013年度から継続的に日本の大学で学ぶ日本語学習者の作文データを収集し、コーパス化を行った。2015年度は最終年度であることから、その成果を『上級学習者の日本語作文データベース2013-2015年度版』としてまとめ、データ分析の結果を通じて、日本語教育への応用可能性を検討した。また、試験的に音声データ収集も試み、今後の研究の発展可能性も検討した。第二言語学習に関する学会での口頭発表を行い、国際雑誌に論文を投稿した。
川口は、当初計画に従って2012年から継続的にトルコ語話し言葉の現地収録を行った。トルコ語話し言葉コーパスに関しては、2012年10月にボアジチ大学、2014年12月にパリのINALCOで本コーパスの概要について、2014年12月に談話標識に関する研究報告を行った。トルコ語話し言葉コーパスの最終的な公開を目指して、2015年7月にマルマラ大学Yılmaz教授を1ヶ月間招聘し、Trasncriberを用いて文字情報と音声を同期させる手法を検討し、幾つかのデータを試験的にコーパス化した(試験公開 http://www.coelang.tufs.ac.jp/multilingual_corpus/tr/corpusSearch/view/)。今後も同作業を継続する予定である。
2015年は最終年度であることから、他の科研Aと共催で、マンチェスター大学のHansen教授を招き、コーパスに基づく談話標識に関する講演をお願いした。また台湾の淡江大学の呉錫徳教授を招聘し、先進的な外国語教育に関する講演と言語コーパスの教育への利用方法、遠隔システムを利用した双方向授業の実施等について話し合うことができた。さらに他の科研と共催で、ケンブリッジ大学のJones教授を招き、少数言語およびフランス語方言の諸問題に関する講演会を実施した。