2011年度 ヨーロッパ文化論Ⅰ
(欧米第一地域文化論)


授業題目名:ドイツ文化研究2011 ――市民概念の変容 (2)

開講時間

後期木曜・4限

授業の目標

 ワイマール時代から現在に至るまでの、市民概念をめぐる批判的言説のさまざまなかたちを取り上げて考察する。文学・映像テクストの分析自体も重要な目標となる。
 この問題はまた、ドイツ研究そのものにとって重要なテーマであるだけでなく、日本における市民概念、教養主義をめぐる問題にとっても重要であり、日本における現象もパラレルに考察していきたい。

授業概要

ドイツにおける市民概念の成立と特徴を簡単に確認したのち、いくつかの文学テクストや映像作品等をとりあげて、市民的価値観の具体的表れや批判的言説を考察する。

授業計画

 ドイツは市民革命を成功させることなく、第一次世界大戦の終わりまで身分制社会が存続するなかで市民層が発展していくという事情も加わり、ある意味で独特な市民的価値観が形成されていく。この授業では、前期・後期を通じて、19世紀における市民的価値観(とりわけ教養市民層の価値観)の形成、それがその後の歴史的過程のなかで、どのような解体・変容を遂げ、どのような批判的言説のなかに位置づけられ、そしてどのようなかたちをとって生き延びているかを考察する。後期では、ワイマール時代から現在に至るまでの、市民概念をめぐる批判的言説のさまざまなかたちを取り上げて考察する。
 以下の文学・映像テクストを扱う予定:ダダ、アルフレート・デープリン『ベルリン・アレクサンダー広場』(1929)、ベンヤミン『一方通行路』(1928)、『ベルリンの幼年時代』(1932–1934)、ギュンター・アイヒ『夢』(放送劇)(1950)、デュレンマット『貴婦人故郷に帰る』(1956)、Rolf Dieter Brinkmann(未定)、Uwe Timm, Heißer Sommer (1974)、ヴェルナー・ヘルツォーク『カスパー・ハウザーの謎』(映画)(1974)、クリスティアン・クラハト『ファーザーラント』(1995)。

成績評価の方法

出席、授業への積極的参加、発表、レポートにより判断する。

テキスト・教材・参考書等

・野田 宣雄『ドイツ教養市民層の歴史』講談社学術文庫
デープリーン『ベルリン・アレクサンダー広場』河出書房新社 (1971) 、ベンヤミン『一方通行路』『ベルリンの幼年時代』(『ベンヤミン・コレクション3 記憶への旅』、ギュンター・アイヒ『夢』(アイヒ『もうひとりのわたし』ギュンター・アイヒ放送劇集、松籟社、1997)、デュレンマット『貴婦人故郷に帰る』(『筑摩世界文学大系85』1974年、所収)、Uwe Timm, Heißer Sommer, dtv, クラハト『ファーザーラント』三修社、1996。

受講上の注意

ドイツ語のテクストを読む予定。ドイツ語既習者であることが望ましい。前期に出席していない学生は、最初の時間までに野田 宣雄『ドイツ教養市民層の歴史』(講談社学術文庫)を入手し、読んでおくこと。
文学テクストについては、授業で取り上げる箇所のドイツ語は、授業の際に配布する。作品全体は、授業で扱う時までに、翻訳でよいので読んでおく。


レポートについて