2011年度 ヨーロッパ文化論Ⅰ
(欧米第一地域文化論)


授業題目名:ドイツ文化研究2011 ――市民概念の変容 (1)

開講時間

前期木曜・4限

授業の目標

19世紀ドイツにおける市民概念の形成と、20世紀における批判的言説やそれに伴う市民概念の変容の過程を考察する。文学・映像テクストの分析自体も重要な目標となる。この問題は、ドイツ研究そのものにとって重要なテーマであるだけでなく、近代化の過程においてドイツ文化の移入が決定的な影響を与えた日本における市民概念、あるいは教養概念を考える上でも重要であり、日本における教養主義をめぐる問題も、この授業のもう一つの重要な軸である。

授業概要

ドイツにおける市民概念の成立と特徴を確認したのち、いくつかの文学テクストや映像作品等をとりあげて、市民的価値観の具体的表れや批判的言説を考察する。

授業計画

 ドイツは市民革命を成功させることなく、第一次世界大戦の終わりまで身分制社会が存続するなかで市民層が発展していくという事情も加わり、ある意味で独特な市民的価値観が形成されていく。この授業では、前期・後期を通じて、19世紀における市民的価値観(とりわけ教養市民層の価値観)の形成、それがその後の歴史的過程のなかで、どのような解体・変容を遂げ、どのような批判的言説のなかに位置づけられ、そしてどのようなかたちをとって生き延びているかを考察する。前期では、おもに19世紀から、世紀転換期、ワイマール時代までを扱う。
 まず、ドイツにおける市民概念に関する概観を行い、そののち、いくつかの文学・映像テクストを取り上げる。扱うテクストは、ゲーテ『若きヴェルターの悩み』(1774)『親和力』(1809)、ニーチェ『ツァラトゥストラ』(1883-91)、トーマス・マン『ブッデンブローク家の人々』(1901)(およびハインリッヒ・ブレレーアによる2008年の映画)、ヘルマン・ヘッセ『荒野のおおかみ』(1927)の予定。いずれも、授業ではドイツ語使用。

成績評価の方法

出席、授業への積極的参加、発表、レポートにより判断する。

テキスト・教材・参考書等

授業中に指示する。

受講上の注意

ドイツ語のテクストを読む予定。ドイツ語既習者であることが望ましい。最初の時間までに野田 宣雄『ドイツ教養市民層の歴史』(講談社学術文庫)を入手し、読んでおくこと。
文学テクストについては、授業で取り上げる箇所のドイツ語は、授業の際に配布する。作品全体は、授業で扱う時までに、翻訳でよいので読んでおく。


レポートについて