山口裕之 博士学位論文
(東京大学大学院総合文化研究科)

ベンヤミンのアレゴリー的思考
――デーモンの二義性をめぐる概念連関――


目次

T 思考モデルとしての『カール・クラウス』

1 「全人間」 ― あるいは古典的ヒューマニズム
2 「デーモン」 ― あるいは二義性
(1) 初期ベンヤミンにおける「デーモン」をめぐる概念連関
(2) さまざまな二義性の領域
虚栄 - 芝居的な身振り- 自然 - 法 - 精神と性 - 罪 - 売春
(3) デーモンの二義性 あるいは静止状態にある弁証法
3 「非人間」 ― あるいは現実的ヒューマニズム
(1) 古典的ヒューマニズムから現実的ヒューマニズムへの転換
(2) 人喰いと子供 あるいは破壊と根源
(3) 根源と破壊としての引用
(4) 根源概念の両極性
(5) 神学的性格と唯物論的性格の媒介としての引用
(6) 政治的批評の技術としての引用
(7) 後期クラウスの政治姿勢に対する理解
(8) 新聞

U 「ボードレール論」第二部としての『ボードレールにおける第二帝政期のパリ』― 古典古代と近代の相互浸透

1 『ボードレールにおける第二帝政期のパリ』の位置
(1) 「ボードレール論」の構想の経緯と構成
(2) クラウス論との並行性
(3) 『第二帝政期』の二つの版
2 「ボヘミアン」― 社会の外側からのまなざし
3 「フラヌール遊歩者」― 大衆の3つの機能
(1) 避難所としての大衆・個々人の痕跡の消滅
(2) ヴェール・麻薬としての大衆
(3) 大衆の「地下的・冥界的」特徴
4 「近代」―― 二義性の支配圏
(1) 英雄と近代
(2) ボードレールとベンヤミンにおける「近代性/現代性」
(3) ディゾルヴ・二義性・アレゴリー
(4) 詩的戦略 ― 芸術の政治性に向けて

V 『ドイツ悲劇の根源』の内的構造

1 バロック悲劇の内実としての「自然史」
(1) バロック悲劇の「内在性」と「歴史」
(2) 被造物の連関
(3) 時間性の空間化と神学 ―自然史の概念
(4) アドルノの『自然史の理念』(補論)
2 アレゴリーとデーモン
(1) アレゴリーと自然史
(2) 「廃墟」におけるアレゴリー的な見方の構造性
(3) 文字と意味
(4) 意味と悲しみ
(5) アレゴリーとデーモン
(6) デーモンの二義性
宮廷における「廷臣」・「陰謀家」- ギリシア悲劇との対置関係
(7) アレゴリーの「急転」―そして『ドイツ悲劇の根源』の三段階的構造
3 「根源」の概念
(1) ベンヤミンの理念論
(2) 理念の構成的本質―モナドとしての理念
(3) 理念としての根源と歴史の概念

W 「アレゴリー的な見方」― ベンヤミンの思考

1 ベンヤミンの「弁証法的」思考
2 弁証法的形象としてのアレゴリー
3 方法としてのアレゴリー


略号
参考文献